Jリーグ クラブ別大総括(16) サンフレッチェ広島編
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サンフレッチェ広島の2007年シーズンを振り返る。
■ ペトロビッチ体制の2年目
06年の途中に監督に就任し、見事にJ1残留に導いたペトロビッチ監督。シーズン序盤は順調で、最初の13試合で6勝4敗3分けと7位につけた。
ボランチの森崎和を右CBに起用し、ベテランのMF戸田をリベロに置く奇策が功を奏し、最終ラインからの正確なビルドアップを基点とする精度の高いカウンターアタックが機能し、さらなる躍進を期待させた。FWウェズレイは、12節のジェフ千葉戦でハットトリックをマークするなど、シーズン序盤から得点王レースのトップを走った。相方のFW佐藤寿人もゴールを量産し、J1最高の2トップを形成した。
しかしながら、後半戦から、歯車がかみ合わなくなった。リーグ再開後の17試合で、2勝11敗4分けと大失速し、年間順位は16位に低迷。京都サンガとの入れ替え戦に回ることになった。その入替戦では1敗1分けに終わり、J2降格が決定した。
■ 失速の要因
失速の要因はいくつか考えられるが、まず挙げられるのが、ペトロビッチ監督の能力不足である。
ペトロビッチ監督は06年に続いて、DFラインに森崎和、盛田といった本職ではない選手を起用し、最終ラインからのビルドアップを重視した。うまくいっているときのチームは、DFラインの組み立てからうまくゴールを奪ったが、いったんチームがうまくいかなくなると、DF面での粗が露呈し、無駄な失点を重ねた。
ペトロビッチ監督は、森崎和のセンターバック起用など、かたくなに持論を守り通したが、信念を貫いたというよりは、ペトロビッチ監督には、それ以外のアイディアがなかったということだろう。彼の引き出しは、ほとんどなかった。
途中解任の可能性も考えられたが、最後までフロントはペトロビッチ監督に任せた。しかしながら、結果は吉とは出なかった。
■ 失敗したストヤノフ獲得
シーズン中盤には、千葉を退団していたDFストヤノフを獲得。経験豊富で3バックの中央を任せるには最適な人材を獲得し飛躍が期待されたが、そのストヤノフも大誤算だった。
試合出場から遠ざかっていたこともあってコンディションが最悪で、スピード不足は致命的だった。ストヤノフの加入によって、戸田を中盤に上げたり、ストヤノフをトップ下で起用したり、いろいろな策を試したが、どれも有効には機能せず、チームに混乱をもたらしただけだった。
レベルアップを目指して能力のある選手の獲得を果たしたことは評価できるが、あまりにもストヤノフはコンディションに問題があり過ぎた。
■ 2トップの不振
シーズン序盤は大活躍を見せたFWウェズレイとFW佐藤の2トップが、後半戦にスランプに陥ったことも計算が狂った要因となった。佐藤は、途中で12試合もゴールが遠ざかるなど、リーグ戦では12ゴールに終わった。
フォワードのバックアップは、実質、U-20代表のFW平繁しかおらず、ウェズレイと佐藤がどれだけ調子を落としても、ベンチに代役はいなかった。層の薄さは致命的で、佐藤はともかく、ウェズレイは35歳の年齢であり、シーズンを通して活躍するには苦しいということは事前に予想できただけに、危機管理不足と取られても仕方がない。
ウェズレイも佐藤も平繁も高さのある選手ではなく、パワープレーを仕掛けようとしても、パワープレーが得意な選手はおらず、戦術的な幅も狭かった。
■ 新しい力の台頭
明るい話題も無いわけではなかった。その筆頭に挙げられるのは、U-20W杯にも中心選手として出場したDF槙野の台頭である。U-20W杯で自信をつけたDF槙野は、リーグ再開後に出場機会を伸ばし、3バックの一角でポジションをつかんだ。チームの成績には現れなかったが、DFラインに高さを加えた。
守備だけでなく、積極的に攻撃に参加する姿勢も評価できるポイントであり、タフな精神力も魅力である。若手CBでは、水本(千葉)と青山(清水)に次ぐ存在に登りつめた。DFストヤノフが衰えを見せる中で、ようやく、長きに渡ってチームの軸になりうるディフェンダーが登場し、今後の飛躍が期待される存在となった。
入替戦では、京都のFW田原に対して空中戦で苦戦を強いられたがノビシロも十分で、日本のトップディフェンダーに育つ可能性を秘める。
■ チームの中心となった柏木
同じくU-20W杯に出場した、MF柏木はU-22代表でもポジションを獲得し、チームを五輪出場にも導いた。所属の広島では、後半戦になって2トップが不調に陥る中で、抜群の視野の広さを生かした大きな展開を見せて、カウンターアタックの基点として、チームの命運を握る存在となった。
絶えることのない運動量と意外性のあるパスに加えて、パンチ力のあるシュートも魅力であるが、空回りすることも少なくなかった。2トップの不振という理由もあったが、U-20W杯を経験したMF柏木自身の成長がチームバランスを崩して、勝利から遠ざかる要因となったことも否定できない。
■ ペトロビッチ監督の意図
フィード力のある選手を最終ラインに並べることの意味は、ポゼッション力を高めることで、最終ラインから丁寧につないで簡単にボールを失わないようにしようという狙いもあるが、どちらかというとペトロビッチ監督の意図はそうではなく、最終ラインにパスの出せる選手を置くことで、DFラインで奪ったボールを素早くかつ正確にトップに配給して、縦に早いサッカーをしたかったものだと思われる。
うまくいっているときは問題はなかったが、中盤戦以降の負けが込んできた時期は、ボールを大事にしようとする意識が働きすぎて、DFラインから「リスキーだが効果的なパス」が出される回数が激減し、持ち味である攻守の切り替えの早いサッカーではなく、スローなサッカーになってしまった。こうなると、DF面での不安をかかえながら最終ラインにパス能力のある選手を置いている意味が薄れて、むしろ逆効果になってしまった。
■ 続投の判断の是非
J2に降格したことについて、ペトロビッチ監督の責任は免れない。しかしながら、クラブはペトロビッチ監督の続投を支持しているようで、フロントとサポーターの乖離は大きい。
確かにペトロビッチ監督のサッカーははまったときは魅力的であったし、一定の評価を与えることは間違いではない。しかしながら、結果的には、チームはJ2に降格してしまった。2度目の降格であるが、J2のレベルは当時と比べて飛躍的に上がっており、1年でJ1に復帰できるかどうかの確率は、50%程度だろう。復帰は簡単ではない。
サンフレッチェ広島は、Jリーグのオリジナル10のメンバーであり、優勝経験のあるチームである。「J2に降格してしまったけど、サッカーの内容は評価できるから監督を続投させる」というクラブ側の説明で納得できるサポーターは皆無だろう。
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