■ J1の第2節J1の第2節。開幕戦はアウェイで広島に0対2で敗れたヴァンフォーレ甲府がホームの山梨中銀スタジアムで名古屋グランパスと対戦した。甲府は開幕戦はほとんどチャンスを作れなかった。対する名古屋は開幕戦は昇格チームの松本山雅とホームの豊田スタジアムで対戦したが、点の取り合いの末、3対3の引き分けに終わった。スタメンに抜擢された19歳のMF小屋松がJ1での初ゴールを記録した。
ホームの甲府は「3-1-4-2」。GK荻。DF畑尾、山本英、野田紘。MF新井涼、松橋優、阿部翔、石原克、稲垣。FW阿部拓、アドリアーノ。先の広島戦(A)は「3-4-2-1」を採用したが、攻撃に厚みを持たせるためにこの日は2トップを採用。C大阪とG大阪で活躍した実績を持つブラジル人のFWアドリアーノと、東京Vで活躍したFW阿部拓の2トップとなった。新外国人のMFブルーノ・ジバウはベンチスタートとなった。
対するアウェイの名古屋は「4-2-3-1」。GK楢崎。DF竹内彬、牟田、闘莉王、本多。MF田口、ダニルソン、矢田、小屋松、永井謙。FWノヴァコヴィッチ。こちらは松本山雅戦(H)とスタメンは変わらず。MFレアンドロ・ドミンゲスは怪我で戦列を離れており、19歳のMF小屋松が2試合連続スタメンとなった。日本代表入りが期待されるMF永井謙は11番、MF田口は7番を今シーズンから背負うことになった。
■ 1対0で勝利した甲府が今シーズン初勝利試合の前半は動きの少ない展開となる。攻撃的なポジションのタレント力で相手を大きく上回るアウェイの名古屋が主導権を握るかと思われたが、スロースタートでなかなかチャンスを作れない。新システムを採用した甲府は大卒2年目のMF稲垣の運動量の多さが目立ったが、FWアドリアーノとFW阿部拓の2トップがいい形でボールを受けることが出来ず。ともにほとんど見せ場を作れずに0対0で折り返す。
後半10分あたりを過ぎると名古屋のボランチのMF田口の位置がかなり高くなって、MF田口を起点に名古屋が押し込むようになる。後半17分にはFWノヴァコヴィッチのスルーパスを受けたMF永井謙が左サイドを疾走して切り返してから左足で強烈なシュートを放ったが、クロスバー直撃で先制ならず。甲府は後半35分にゴール右寄りの絶好の位置でFKを獲得すると、左WBのMF阿部翔が直接決めて先制に成功する。
結局、古巣対決となったMF阿部翔の鮮やかなFKが決勝ゴールとなって1対0でホームの甲府が勝利して今シーズン初勝利を飾った。昨シーズンの第21節のG大阪戦(H)でJ1では最長記録となる247試合目での初ゴールを決めたMF阿部翔のJ1通算2ゴール目は古巣の名古屋相手のゴールで、しかも決勝ゴールというドラマチックな展開となった。甲府は次の3節もホームゲームで強豪のG大阪と対戦する。
■ 阿部翔平が古巣相手に決勝ゴール正直なところ、動きの多いエキサイティングな試合にはならなかったが、2006年から2013年まで名古屋に在籍して不動の左SBとして大きくチームに貢献したMF阿部翔が古巣の名古屋を相手に決勝ゴールを決めるというドラマ性のある結末となった。直接ゴールを狙うにはちょっと近すぎる距離だったが、キック自体はパーフェクトで、元日本代表のGK楢崎でもどうすることもできなかった。
クールな選手なので、「対名古屋」ということに対しても平静を装っていたが、契約満了という形で2013年のオフに甲府に移籍している。プロ選手である以上、何かしらの思うところはあっただろう。甲府は1節の広島戦は枠内シュートがゼロで、この試合もここまで枠内シュートがゼロだったので、チームとして今シーズン初となる枠内シュートだったが、これが勝利を呼び込む貴重な決勝ゴールとなった。
決して前評判の高くない甲府にとっては2節という早い段階で勝ち点「3」を獲得できたのは大きい。対戦カードは1節が広島(A)で、2節が名古屋(H)で、3節がG大阪(H)で、4節がFC東京(A)で、5節が神戸(A)で、6節が鳥栖(H)で、7節が川崎F(A)で、8節が浦和(H)で、9節が鹿島(A)となっており、前半戦は前評判の高いチームとの対戦が続いていく。厳しい日程と言えたので、極めて大きな勝利と言える。
■ 樋口監督の大きなチャレンジまた、「システム変更を実施する。」という手を加えてきた中で勝利を掴むことができた点も大きい。攻撃に厚みを持たせるためのシステムだったが、一種のギャンブルである。「樋口監督はイライラしているのかな?」と思うような早いタイミングでのシステム変更だったので、ここで結果が出ないとチーム内が混乱する可能性もあった。吉と出るか、凶と出るか。どちらにも転ぶ可能性はあったが、ひとまず吉と出た。
樋口監督にとっても嬉しい勝利と言えるが、いろいろな意味で難しい環境と言える甲府から誘いを受けてオファーを承諾した樋口監督の勇気はきちんと評価したいところである。城福監督が率いた3年間は甲府のような地方のスモールクラブにとっては最上級ともいえる素晴らしいシーズンを送ったが、評価の高い監督であり、しかも、大成功した監督の後を引き受けるというのはなかなか大変なことである。
樋口監督も横浜FMで天皇杯を制して、2012年は4位で、2013年は2位で、2014年は7位とリーグ戦でも好成績を残している。資金力も限られており、横浜FMと比べると環境的に劣っている甲府の監督をこのタイミングで引き受けるというのは非常にリスキーだったと思う。もう少し好条件で、かつ、楽なオファーが届いてもおかしくないだけの結果を横浜FMで残して来た監督なので、その心意気は立派だったと思う。
■ 名古屋のカギを握る大卒2年目の矢田旭一方の名古屋は低調な内容だった。松本山雅(A)との開幕戦は結果は3対3の引き分けだったが、出来としてはそこまで悪くは無かった。ホームとはいえ、2点ビハインドを追いついたので、上向きの状態で甲府との試合を迎えることが出来たと思うが、試合の序盤からテンションが低かった。後半の途中から攻撃がやや活性化したが、エンジンがかかるのが遅すぎた。気持ちが伝わらない残念な試合になったと言える。
MF永井謙あるいはMF小屋松が高い位置でプレッシャーをかけていい位置でボールを奪い取ることが出来たときはチャンスになりかけたが、スローダウンさせられたときはほとんど甲府の守備を崩すことはできなかった。今シーズンの甲府は高さが無いので、J1屈指の高さを誇る名古屋はその点を突きたかったが、相手のウイークポイントである「高さ不足」を突くようなシーンはほとんどなかったと言える。
中盤から前のポジションはタレントが揃っていて、かつ、タイプ的にもバリエーションが豊富である。基本的にはどの選手も技術が高いが、FWノヴァコヴィッチは高さと巧さがあって、MF永井謙とMF小屋松は突出したスピードがあって、MF田口やMF矢田はパスセンスが光る。MFダニルソンもいるので、中盤から前のクオリティーはJ1でもトップレベルだと思うが、なかなか噛み合わない。
献身的にプレーできる選手も多いのでうまく機能しないのは不思議に感じるが、もうひと頑張りが必要なのは大卒2年目のMF矢田になるだろう。非常に西野監督の評価が高くて、FW川又やFW松田力やMF小川佳などがいる中で主力の1人としてスタメンの機会を得ている。左足のキックと判断の正確さに定評があるが、この2試合はタレント軍団の中で十分な存在感を発揮しているとは言えない。
ボランチのMF田口の味方を使うのが上手な選手であるが、MF永井謙とMF小屋松は味方選手に使われることで生きるタイプで、MFダニルソンはどちらかというと本能でプレーするタイプである。FWノヴァコヴィッチは味方を生かすプレーも上手な選手と言えるが、MF永井謙やMF小屋松あたりの能力が十分に引き出されるかどうかは今のメンバー構成ではMF矢田によるところが大きい。彼が今の名古屋のキーマンと言える。
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