■ 第3節スイスリーグの第3節。2連勝スタートを切った5連覇中の王者のバーゼルはアウェーでトゥーンと対戦した。トゥーンは2勝1敗で勝ち点「6」を稼いでいる。今夏、J1のC大阪からスイスのバーゼルに移籍したFW柿谷はここまでの2試合はともにベンチ外だったが、3節にして初めてベンチ入りを果たした。出場機会があれば3節のトゥーン戦がスイスでのデビュー戦であり、欧州デビューとなる。
ホームのトゥーンは「4-2-3-1」。GKライテ。DFグラーナー、ラインマン、シンデルホルツ、ヴィットヴァー。MFヘディガー、スッター、フェレイラ、シュノウリー、ゴンザレス。FWサディク。前のグラスホッパー戦ではトップ下のMFシュノウリーがハットトリックを記録してチームは3対2で勝利している。2013-2014シーズンは13勝14敗9分けで勝ち点「48」の6位という成績だった。
対するアウェーのバーゼルは「4-1-2-3」。GKヴァツリーク。DFデゲン、シェア、スヒー、サファリ。MFチャカ、エルヘニー、ズッフィ。FWゴンザレス、シュトレラー、ガシ。196センチの長身ストライカーのFWシュトレラーはスイス代表として国際Aマッチは37試合で12得点を挙げているが、2011年4月に代表戦におけるパフォーマンスを批判されたことが原因で代表引退を発表した。
■ 3対2でバーゼルが競り勝つ試合はアウェーながら実力で優るバーゼルが優勢となる。前半19分に相手キーパーのクリアミスを拾ったFWシュトレラーが無人のゴールに流し込んでバーゼルが先制すると、さらに前半27分にも右SBのDFデゲンのクロスから左フォワードのFWガシがダイビングヘッドを決めて2点目を挙げる。アルバニア代表のFWガシは今シーズン2ゴール目となった。前半は2対0で終了する。
後半になると流れはホームのトゥーンに傾いていく。後半4分にFKからゴール前にこぼれたボールを後半開始から投入された途中出場のMFカルジェロヴィッチが決めて1点を返す。流れの悪くなったバーゼルは後半32分にFW柿谷を投入。後半38分にFW柿谷がゴール前の際どいシーンを作るが、後半39分にスローインの流れからFWサディクが決めてトゥーンが2対2の同点に追い付く。
2対2の同点に追い付かれたバーゼルだったが、後半43分に右サイドでセットプレーを獲得すると、現役のスイス代表でブラジルW杯にも出場したCBのDFシェアが合わせて3対2とバーゼルが勝ち越しに成功する。結局、試合は終了間際の後半43分に勝ち越しゴールを奪った3対2でバーゼルが競り勝って開幕から3連勝となった。トゥーンは2勝2敗とイーブンの成績となった。
■ 4回戦総当たり方式のスイスリーグスイスの1部リーグは10チームで構成されており、4回戦総当たり方式でリーグ戦を戦っていく。冬場は雪の多い国なので、他の欧州リーグよりも早くシーズンが開幕して、ウインターブレークが長く取られているが、早くも3節が終了してFW柿谷の所属するバーゼルは3連勝スタートとなった。今シーズンからチームを指揮しているパウロ・ソウザ監督は順調なスタートを切ったと言える。
スイスの国内リーグを観る機会というのはこれまでほとんどなかったので非常に新鮮と言えるが、欧州の主要リーグと比べるとスタジアムの雰囲気はまったりとしている。プレー面では要所要所では激しいプレーはあるが、王者のバーゼルはもちろんこと、対戦相手のチームも綺麗にボールをつなごうとするチームが多いので、攻撃的なサッカーを志向するチームが多いという印象がある。
1部リーグに所属する10チームのうち、昨シーズンの上位2チームはCLに出場するチャンスがあって、3位と4位と5位のチームはELに出場することができる。FW柿谷が所属しているバーゼルはCL、FW久保が所属しているヤングボーイズはELに出場するチャンスがあるが、10チームのうち半分の5チームが欧州の舞台に挑戦できるので、欧州の舞台にチャレンジできるチームは多い。
■ 左右のフォワードがメインポジションか。注目のFW柿谷は後半32分にピッチに送り出された。後半38分にFWシュトレラーの落としからDFラインの裏に抜け出したシーンが最大の見せ場だったが、シュートに持っていくことはできなかった。後ろから相手選手にチャージされており、FW柿谷本人だけでなく、バーゼルの選手の何人かがPKをアピールしていたが、あのくらいの接触で倒れるのは宜しくないと言える。
ポジションは左フォワードだった。バーゼルは「4-1-2-3」と表現できるシステムを採用しており、「3トップの中央」、「左右のフォワード」、「中盤の「2」の位置」でプレーする可能性があるので、「2」のところと、「3」のところの計5つのポジションで起用される可能性があると言えるが、これまでの試合を観る限りでは、右フォワードと左フォワードの2つがメインポジションになるのではないか。
中盤の「2」のところでもプレーできると思うが、どちらかというと、このポジションはボランチ的な選手が起用されているように思われる。「2」のところに入っている選手が攻撃の中心になるシーンは少なくて、守備で貢献できて、かつ、飛び出す能力のある選手が起用されているように思えるので、FW柿谷のキャラクターと「2」のポジションに求められていることは違っているように思える。
また、3トップの中央のFWシュトレラーは196センチの長身で、経験のある選手である。チームの顔であり、中心選手なので、彼を差し置いてFW柿谷が3トップの中央で起用される可能性は高くない。FWシュトレラーは33歳とベテランの域に入っており、彼を休ませるときに真ん中でプレーするチャンスがやってくると思うが、3トップの中央でスタメンを勝ち獲るというのは現実的ではない。
■ メインポジションは左右のフォワードか?となると、残るのは左右のフォワードである。3トップと表現されることが多いが、FWシュトレラーが最前線にいて、両サイドのフォワードはそこから少し下がったところにポジションを取ることがほとんどで、かつ、両サイドのフォワードにも守備の要求が多い。「4-1-2-3」というよりは、「4-1-4-1」のように見えるシーンが多いので、左右のフォワードはかなり運動量が求められるポジションである。
とりあえずとしてライバルになるのは左フォワードで起用されているアルバニア代表のFWガシという選手であるが、結構な強敵である。グラスホッパーから移籍してきたが、昨シーズンのスイスリーグの得点王である。攻撃的MFと紹介されていることが多いので、ストライカーというよりは豊富な運動量でゴール前に進出できる2列目の選手なのかもしれないが、質の高い選手である。
右フォワードで起用されているのはパラグアイ出身のFWデルリス・ゴンサレスであるが、こちらは南米の選手らしくガツガツした選手で積極的に縦への突破を図るタイプである。FW柿谷とは全くタイプが異なるが、右サイドに張っていて、ここからドリブルやクロスでチャンスを演出するシーンは多かった。精度という点ではあまり高くなかったが、膠着した状況を打開できる選手の1人である。
バーゼルは国内リーグで5連覇中の強豪なので当たり前の話であるが、ポジションは約束されていない。イングランドやドイツやイタリアと比べるとスイスリーグのレベルが落ちるのは間違いないが、バーゼルに関してはCLに出場するクラブであり、質の高い選手が揃っているので、ポジション争いというのはかなり大変である。レギュラー獲得まで時間がかかる可能性は否定できない。
ただ、いい環境でプレーできているのは確かである。バーゼルは組織的なチームで、攻撃的なチームで、守備の面でサボることは許されない。「泥臭いプレーでチームに貢献する。」という点がFW柿谷に不足しているところの1つであるが、このチームで継続的にプレーできればそういう部分を身に付けることができるだろう。焦る必要はないが、それでも、早い時期に結果を出したいところである。
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