■ なぜギリシャのゴールをこじ開けられなかったのか?ギリシャのゴールをこじ開けることができなかった理由については、様々な人が様々な意見を持っていると思う。「運が無かった。」というのも1つの理由であり、「ギリシャの選手の集中力が最後まで切れなかった。」というのも1つの理由になると思う。もちろん、単純に「決定力不足だった。」、「決定力不足が露呈した。」と安易に結論付ける人もいると思う。
いくつかの理由が考えられるが、個人的にはギリシャ戦でMF香川をスタメンで起用しなかったことも1つだと思う。もちろん、初戦のコートジボワール戦のMF香川の出来は非常に悪かった。守備力のあるMF大久保やMF岡崎の安心感を買って2人をサイドハーフのスタメンで起用して来たと思うが、ギリシャの攻撃をそこまで警戒する必要があったのか?という点は疑問である。
選手起用が正しかったのか?間違っていたのか?については、逆にギリシャ側の人間だったならばどう感じたか?を考えるとおのずと答えは出てくるが、ビッグクラブであるマンチェスターUでプレーしており、日本人選手の中でもっとも名前が知られているMF香川がスタメンではないことを知ったとき、ギリシャの監督やスタッフや選手や国民は「ラッキー!!!」と感じたと思う。
また、ギリシャのように大柄でクイックネスに欠ける選手が多いチームというのはMF香川が得意としている。怪我の問題や体調の問題で90分間プレーするのが難しい状況であったならばベンチスタートになっても仕方がないが、そういった理由以外でMF香川をスタメンから外したのであれば、ザッケローニ監督のミスだったと思う。土壇場で要となる部分を弄る必要があっただろうか・・・。
■ 縦パスが入っていた割には・・・この4年間、ずっと攻撃の中心を担ってきたのはMF本田圭とMF香川の2人である。右サイドハーフのMF岡崎がザックジャパンで最多のゴール数を記録しているが、相手チームの注意と関心を引き受けてきたのはMF本田圭とMF香川の2人である。怪我や出場停止等の理由があったのであれば仕方がないが、ギリシャ戦は自分たちの方から形を崩して、かつ、結果が出なかった。
代わりにスタメンで出場したMF大久保、左サイドハーフに回ったMF岡崎のパフォーマンスが極端に悪かったわけではないので、「MF香川をスタメンで起用しなかったのは失敗だった。」とは言い切れないが、勝ち点「3」という全員が望んでいた結果を出すことはできなかった。「MF香川をスタメンで使っていれば・・・。」という意見が出てくるのは自然なことである。
ギリシャ戦はいくつかの決定機を作っている。ポゼッションでも圧倒したので、攻撃陣の出来が悪かったわけではない。初戦のコートジボワール戦と比べるとはるかにバイタルエリアに縦パスが入っており、攻撃のスイッチとなりうるパスは多かったが、なかなか縦パスがビッグチャンスに拡大しなかった。きちんと縦パスが入ってきた割には決定機の数は少なかった。
バイタルエリアでMF香川がボールを受けて技術とイマジネーションを発揮してチャンスを作っていくのがこの4年間の日本代表の主となる攻撃パターンであるが、ギリシャ戦ではそれが無かった。ボールを圧倒的に支配して、バイタルエリアに有効なパスは入ってきたが、最後の一捻りが無かった。相手にとっては「最後のところだけ集中して守っていれば大丈夫。」という攻撃になった。
■ 悔いの残るイレギュラーな選択2年間プレーしたドルトムントでは主にトップ下でプレーして高い評価を受けたが、ザッケローニ監督は左サイドハーフで固定した。「ドルトムントで見せているプレーが日本代表ではできていない。」という評価を受けることが多かったが、この4年間、MF香川が日本代表の多くのゴールに絡んできたのは間違いないところである。日本代表の攻撃の生命線だった。
サイドハーフとしての総合力ではMF大久保やMF岡崎と大差があるわけではないが、全くタイプが異なるので、MF香川がいなくなると崩しの局面ではスケールダウンする。合流してあまり時間が無かったことも関係しているので、MF大久保を責めるのは酷であるが、日本代表のサイドハーフでプレーしているときのMF大久保は風間監督と出会う前のMF大久保である。
もちろん、積極的なドリブルやシュートで惜しいシーンを作っているが、冷静沈着にゴールを狙う川崎Fのエースであり、Jリーグ得点王のMF大久保ではない。直前の親善試合を含めて何度かサイドハーフで起用されているが、MF香川やMF岡崎はもちろんこと、MF清武が入っているときと比べても周囲との関係は今一つで、攻撃のときに流動性が生まれにくい要因の1つになっている。
■ ザッケローニ監督の決断はどうだったか?何だかんだでMF香川が左サイドハーフにいると相手の注意が分散されるのでトップ下のMF本田圭へのマークが緩くなるし、左SBのDF長友も攻撃に参加しやすくなるし、左サイドで起点ができることで右サイドで待っているMF岡崎に決定機が訪れる可能性が高くなる。ここを弄ったことで他の部分にも影響が出ているので、ザッケローニ監督の判断にはクエスチョンマークが付く。
結局、後半途中で1トップのFW大迫に代わってMF香川が投入されたが、「ギリシャの守備が強固で、なかなかゴールをこじ開けられない。」という流れが出来つつあった時間帯だったので、集中して守るギリシャの守備網を破壊していくのは難しかった。(※ 後半の頭からMF香川を投入する選択肢もあったと思うので「投入のタイミング」についても賛否両論あるだろう。)
初戦でいいプレーができなかったMF香川にも責任はあるので、ザックだけを責めるのは筋違いと言える。先のとおり、スタメン選びも失敗だったとは言えない。ただ、いつもどおりのオーソドックスなやり方で結果が出なかったときも悔いは残るが、イレギュラーなやり方をして結果が出なかったときの方がもっと悔いが残る。ギリシャ戦は何とも悔いの残る試合になってしまった。
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