■ J2の開幕戦J2の開幕戦。J2に昇格して4年目のシーズンとなるファジアーノ岡山が、ホームのkankoスタジアムでカターレ富山と対戦した。昨シーズンの成績は、岡山が13位で、富山は16位。富山もJ2に昇格して4年目のシーズンとなる。
ホームの岡山は「3-4-2-1」。GK中林。DF一柳、後藤、植田。MF仙石、竹田、澤口、服部、中野、金民均。FWチアゴ。広島から加入のGK中林とMF服部が揃ってスタメン出場。シンガポールから戻ってきたMF中野は2列目でスタメン起用された。完全移籍を果たしたMF仙石がキャプテンマークを巻いて、MF竹田とダブルボランチを組む。
対するアウェーの富山も「3-4-2-1」。GK鶴田。DF吉井、福田、平出。MF吉川、加藤、大西、ソ・ヨンドク、木村、関原。FW黒部。京都から加入のMF加藤はボランチでスタメン出場。元日本代表のFW黒部の1トップで、横浜FMの下部組織出身のMF木村とMF関原がシャドーの位置に入る。新加入のMF山瀬幸は怪我のため欠場。FW苔口はベンチスタートとなった。
■ 1対1のドロー序盤はホームの岡山がテンポ良くパスを回して試合の主導権を握るが、前半10分あたりから、中盤での不用意なミスが増えてきて、富山にカウンターのチャンスを与えるようになる。これによって、富山が攻撃のリズムを掴んで試合の流れが移り始めた前半30分に富山が先制に成功する。クリアボールを拾ったMFソ・ヨンドクが思い切りのいいミドルシュートを放つと、これがバウンドしてコース隅に決まって先制ゴールを奪う。
嫌な展開になった岡山だったが、前半終了間際に狭いエリアでパスを交換して、最後にMF中野の浮き球のパスをカットしようとした富山のMF平出がペナルティエリア内でハンドを犯してPKを獲得。FWチアゴが確実に決めて1対1の同点に追いつく。昨シーズンは8ゴールを挙げたエースのゴールで岡山が前半終了間際に追いついて、1対1で折り返す。
後半は、ほぼ互角の展開となる。同点に追いついた岡山は、持ち味であるショートパスが回り始めて、見せ場を作るようになる。一方の富山は、後半24分にMF平野、後半34分にFW西川を投入。二人の交代選手がアグレッシブなプレーを見せて、攻撃を引っ張っていく。終了間際には、FW西川がゴール正面からシュートを放つが、惜しく枠を外れて勝ち越しはならず。結局、4年目のチーム同士の対戦は、1対1のドローに終わった。
■ 好プレーを見せた中野裕太J2に昇格して4年目のシーズンとなる岡山は、19位→17位→13位と、毎年、少しずつ順位を上げてきた。オフにDFストヤノフが退団したが、3バックシステムを継続し、昨シーズンのメンバーが中心のスタメン11人となったが、MF金民均とMF中野を中心に細かいパスも回るようになって、レベルアップした姿をホームのサポーターに見せることができた。
中でも、良かったのは、シンガポールのゲイランユナイテッドへのレンタル移籍から戻ってきたMF中野で、前半は2列目でプレーしたが、ボールもおさまっていて、周りの選手を生かすパスも秀逸だった。FWチアゴが負傷したこともあって、後半はフォワードの位置でプレーしたが、フォワードのポジションでも、質の高いプレーを見せた。181センチと高さもあって、何でもこなすタイプだが、開幕戦からレギュラー奪取に向けて、いいアピールができたといえる。
また、MF金民均もチャンスに絡んだ。2011年は35試合に出場して4ゴールを挙げたが、ボールを持ったときも落ち着いており、相手に囲まれても打開できるだけの技術とアイディアを備えている。コンディションも良さそうで、二桁ゴール数も期待できるのではないか。岡山は、J2に昇格してから、2列目の弱さがネックになって、得点力が上がらなかった。そのため、今シーズンは新潟からMFアンデルソンを獲得したが、MF中野とMF金民均の二人が好プレーを見せたので、MFアンデルソンも、相当に頑張らないと出番は回ってこないだろう。
■ 健在ぶりを示したMF服部公太左ウイングバックで起用されたMF服部も力を示した。鉄人と呼ばれたMF服部も34歳になって、広島ではベンチスタートになることも増えていたが、左足のクロスとタイミングのいい攻撃参加は、まだまだ武器となる。ゴール前の選手の動きと合わないことがあって、MF服部のクロスがビッグチャンスを生み出すことはなかったが、精度の高いクロスが入っていたので、今後に期待の持てるパフォーマンスを見せた。
岡山は、左アウトサイドも泣き所のポジションで、レギュラーを固定できていなかったが、MF服部の加入でパワーアップを果たした。近年、Jリーグでも、3バックを採用するチームが少なかったので、ウイングバックでプレーすることに慣れている選手は限られてくる。したがって、ウイングバックの動き方を十分に理解できていない選手が多くなってきたが、MF服部は、ずっと広島でこのポジションをやってきたので、全く問題はない。
試合に出場した選手の中では、GK中林、MF桑田、MF服部の3人が広島から加入した選手で、昨シーズンのDFストヤノフも同じパターンだった。よって、近年は、広島→岡山という流れがパターン化されつつある。都市圏のチームとは違って、他クラブと交流を持ちにくい環境にあるが、近くにある大きなクラブとコネクションを持つのは大事なことで、似たようなシステムを採用していることで、移籍してきた選手もスムーズにチームに入っていくことができる。
■ 3バックのパフォーマンスは?一方、DFストヤノフが抜けた3バックは、中央に入ったDF後藤が奮闘した。DFストヤノフのような決定的なパスを出すことは難しいが、堅実な守備と正確なビルドアップを見せて、攻守で高いパフォーマンスを発揮した。また、右ストッパーのDF一柳も悪くなかった。思い切りのいい攻撃参加を見せるシーンもあって、及第点以上のプレーを見せた。
ただ、左ストッパーのDF植田は、フィードのところでミスが目立って、攻撃においてはブレーキとなった。188センチの高さと左足のキックはチームの武器となるが、雨でスリッピーなピッチコンディションに影響されたのか、イージーミスが多くて、攻撃のリズムを壊すプレーが多発した。
今シーズンのJ2は、3バックを採用するチームが増えており、開幕戦では、松本山雅・岡山・富山・大分・湘南・北九州の6チームが3バックを導入している。ほとんどのチームが攻撃力を高めるために3バックを採用しているが、3バックになると、センターバックの選手にも攻撃力が求められる。DF後藤にしても、DF一柳にしても、DF植田にしても、攻撃力を有している選手なので、より一層のレベルアップを期待したいところである。
■ ベテランのFW黒部も奮闘対する富山も、戦いぶりは悪くなかった。シュート数は、岡山が8本で、富山が15本だったので、倍近くのシュートを放って、ゴールに迫る回数も多かった。活躍を見せたのはベテランのFW黒部で、センターフォワードで起用されているが、相変わらずの体の強さを発揮し、チャンスシーンの多くに絡んだ。京都時代はストライカーでゴールを量産したが、最近は味方を使うプレーも巧みになった。
左アウトサイドのMFソ・ヨンドクも、質の高いプレーを続けた。先制ゴールのシーンも見事だったが、それ以上に、緩急自在のドリブルが効果的で、岡山の選手は、MFソ・ヨンドクのドリブルを止められなかった。ゴールから遠いところでドリブルを開始することが多いので、もったいない感じもするが、サイドで確実にボールがおさまるので、チームとしては有り難い存在である。
また、京都から加入のMF加藤もボランチとして試合をコントロールした。京都ではレギュラーに定着することはできなかったが、試合経験も積んでいたので、契約を更新されなかったのは予想外の出来事だったが、即戦力となるボランチを獲得できて、チームは落ち着いた。パスサッカーで育ってきた選手なので、富山のサッカーにもマッチしており、中心として活躍することが期待される。
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