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ロンドン五輪代表の変化と今後の課題は? |
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■ 自力突破の可能性が復活
第4戦でシリアに敗れて、グループ2位に転落したU-23日本代表だったが、第5戦でマレーシアに4対0で快勝し、首位のシリアがアウェーでバーレーンに1対2で敗れたため、グループ首位に再浮上した。最終節は3月14日に行われるが、ホームのバーレーン戦で、勝つか、引き分けると、アトランタ、シドニー、アテネ、北京に続く5大会連続のオリンピック出場が決定する有利な立場となった。
2月5日にシリアに敗れたことで重圧もかかってきたが、見事にはねのけたといえる。マレーシア戦は、怪我人が続出した関係で、MF原口、MF東、MF齋藤学という新しい2列目トリオとなったが、2列目の3人とダブルボランチの距離感が非常によかった。これまでの試合では、2列目トリオが横並びになることが多くて、ボランチの選手も前方にパスを送りにくかったが、この試合では、MF東が機転を利かして、やや下がり目でプレーし、ボランチを助ける動きをしたことで、パスコースが増えて、ボールが回るようになった。
新戦力のMF齋藤学も、運動量豊富に動き回った。序盤は右サイドに張り過ぎていたので孤立気味だったが、慣れてくると中央に入ってきてMF東やMF原口と絡むとともに、DF酒井宏のオーバーラップを引き出した。ゴールシーンは、献身的にプレーしていた事に対するご褒美で、スタメンデビュー戦としては、申し分ない働きを見せたが、もっと連携が取れてくれば、もっとできる選手でもある。
愛媛FCでは、左サイドでプレーすることが多かったので、不慣れなポジションだったことが影響したのか、パスの受け手よりも、パスの出し手として、チームに貢献するシーンが多かったが、言うまでもなく、最大の魅力はバイタルエリアでの仕掛けであり、スピードに乗ったときのドリブルは世代屈指である。誰とでも合わせることのできるタイプで、アシスト能力も高いので、使い勝手のいい選手でもある。横浜FMに戻ってどこまで出場機会が得られるかが、代表に生き残ることができるかどうかのポイントになると思うが、今後が楽しみな選手で、レギュラー候補に急浮上したと言える。
■ 改善が必要なビルドアップの精度
一方で、最終ラインからのビルドアップの精度が低かったことが、課題として残った。何度かマレーシアにシュートチャンスを与えたが、ほとんどが最終ラインからのつなぎでミスが生じたときで、DF鈴木も、DF濱田も、ビルドアップの部分では安定しなかった。アジアのチームが相手のときは、FW大迫の高さでも対抗できるので、困ったときにロングボールを蹴っても、マイボールとなる可能性があるが、本大会になるとそうはいかない。
サイドバックの人選に関しては、見直しが必要かもしれない。U-23日本代表は、右にDF酒井宏、左にDF比嘉を起用しているが、ともにビルドアップができるタイプではないので、センターバックの二人とボランチの二人に負担がかかっている。サイドバックから、縦方向にいいボールが供給されることは皆無で、プレッシャーをかけられると、大きく蹴ってしまうシーンが目立つ。
DF鈴木も、DF濱田も、センターバックとしてはパス出しができる選手なので、能力的な部分での不安は少ないが、パスコースがボランチの二人しかないので、大変である。現状で、DF酒井宏を外すことは考えにくいので、そうなると左サイドを変更するしかないが、サイドバックは、どちらか片方だけでも、ビルドアップのできる選手を置いておかないと、ボールは回りにくくなる。シュツットガルトのDF酒井高も、ビルドアップの得意な選手ではないが、DF比嘉よりは、パス出しのできる選手なので、タイミングが合えば再招集したいところである。
■ プレイスキッカーの不在
この試合では、MF扇原とMF山口蛍がボランチで起用されたが、ともに期待に応えるプレーを見せた。MF扇原は2試合ぶりのスタメンとなったが、うまく試合をコントロールした。ミドルパスの精度が低くて、サイドチェンジしたボールが大きくなってラインを割るシーンは目立ったが、ショートパスの精度は高くて、持ち味であるくさびのパスで攻撃をスピードアップさせた。
また、ゲームメイクだけでなく、2つのゴールにも絡んだ。MF齋藤学のゴールにつながった左足のシュートは、MF扇原が得意とする形で、サイドから転がってきたボールを左足でミートして枠に飛ばす技術は、並外れたものがある。足の振りがシャープで、コースぎりぎりを狙うこともできるので、Jリーグでも、この形から2つのゴールを決めているが、ボランチとしては大きな武器になる。
さらに、前半終了間際には、フリーキックからFW大迫のゴールをアシストしたが、左足のクロスが、このチームで多くのゴールを生み出している。クロスの精度の高さも、MF扇原の武器といえるが、本当であれば、184センチと高さがあるので、キッカーとしてよりも、中で合わせるプレーに期待したいところで、「プレイスキッカーがいない。」という部分は、U-23日本代表が抱えている課題の1つである。
過去の五輪代表は、プレイスキッカーで困ることは少なかったが、ロンドン世代は、優秀なキッカーが少ない。この点は、海外組のMF香川、MF宇佐美、FW宮市らが加わったとしても、改善される問題ではないので、今後、プレイスキッカーを探すしていく必要がある。候補としては、右足であれば、FW大前(清水)、MF高木善(ユトレヒト)、MF水沼(鳥栖)、左足であれば、MF小林(東京V)、MF鈴木惇(福岡)、DF丸橋(C大阪)の名前が浮かんでくるが、本大会では、セットプレーの重要性は高くなるので、注目ポイントである。
■ 急成長を見せるMF山口蛍
マレーシア戦の視聴率は19.0%ということで、世代別代表の試合としては、高い視聴率となった。シリアに敗れたことで、「五輪出場が危なくなった。」と盛んに報道されて、視聴者の関心を集めた結果ともいえるが、多くの人が注目した中で、気持ちの入ったプレーを見せることができたのは、良かった。
その中でも、ボランチのMF山口蛍の献身的なプレーは、心に響くものがあった。MF山口蛍がプロ入りしたのは2009年で、この年の10月の愛媛FC戦でプロデビューを果たしたが、ガチガチだったのか、いいところを全く出せずに、後半早々に退いた。どのプレーも、そつなくこなすタイプだったが、170センチという低身長で、当時は、大きな武器となるものも見当たらなかったので、プロの世界で大成するのは難しいかと思っていたが、ここに来て、U-23日本代表でも、C大阪でも欠かせない選手になってきた。
ロンドン世代は、U-18日本代表、U-19日本代表の頃から、ボランチのポジションに人材を欠いていたので、付け入る隙はあったが、MF山口蛍は、国際経験を積むことで自信を付けて、自分の生きる道を見つけることができた。もともと、「飛び出し」に特徴があったが、フィジカルが強くなって、クラッシャーとして、存在感を発揮するようになった。テクニックは、もともと備わっていたが、ボールを持っても慌てなくなって、際どいところを狙うプレーも増えてきた。
1学年上で同じボランチのMF黒木は、C大阪では、プロ2年目の2009年から出場機会を得ており、同期のDF丸橋もプロ2年目の2010年の後半戦からレギュラーポジションを確保した。したがって、同世代の中でも遅れを取っていて、2009年は3試合、2010年は2試合にしか出場できず、クルピ監督もうまく使いこなせなかった選手なので、改めて、日の丸の重みを感じてしまう。
完成された選手の多いフル代表とは違った視点で見る必要があるので、見ている側も、頭を切り替える必要があるが、この世代の選手は、少しのきっかけで、思いもよらぬ成長を見せることがある。今後、彼以外でも、予選や本大会を通して、大きな変化を見せる選手が出てくるはずなので、新たなパワーの出現に期待したいところである。
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