■ 第2節東日本大震災の影響で延期になったJ2の第2節。3勝6敗3分けで勝ち点「12」の京都サンガと、5勝2敗5分けで勝ち点「20」のロアッソ熊本が西京極で対戦。スタートで躓いた京都だったが、ここ3試合では2勝1分けと結果が出始めている。
ホームの京都は「3-4-3」。GK水谷。DF酒井、染谷、森下。MF秋本、加藤、中山、内藤。FW伊藤、久保、駒井。スタメンの中では、DF酒井、MF内藤が大卒ルーキー。FW伊藤、FW駒井はユース出身のルーキー。ドリブラーのFW駒井はリーグ戦は初スタメン。京都は、FW伊藤、FW久保、FW駒井の10代の3トップ。高校3年生のFW久保はリーグ戦で5ゴールを挙げており、得点ランキングで5位に入っている。
対するアウェーの熊本は「4-4-2」。GK南。DF市村、矢野、福王、原田。MFエジミウソン、根占、西森、武富。FW長沢、宇留野。190mのMFファビオはベンチスタート。熊本はFW長沢がチームトップの5ゴールを挙げている。
■ ロアッソ熊本が勝利試合の序盤は両チームともにパスがつながらずいい形を作れないが、時間が経つにつれてホームの京都がペースを握り始める。前半25分には、右サイドからFW久保がクロスを上げてゴール前のFW駒井がヘッドで合わせるが、惜しくもクロスバー直撃でゴールならず。さらに、その後も、FW久保が立て続けに決定機を迎えるが、決められず。前半は0対0で折り返す。
リズムをつかめなかった熊本は、後半開始から、FW宇留野を下げて、MFファビオを投入。すると、この交代が大成功し、熊本ペースになる。MFファビオは積極的にシュートを狙って流れを呼び込むと、後半14分にMF西森のコーナーキックのこぼれ球をMFファビオが鮮やかなオーバーヘッドキックを決めて熊本が先制する。MFファビオは今シーズン初ゴール。先制ゴールを許した京都は、後半24分にMF内藤がペナルティエリア内に切れ込んで強烈なシュートを放って、GK南の壁を打ち破るが、ゴールラインに入っていたDF福王がスーパークリアを見せて、ゴールを許さず。
熊本は後半37分にFW長沢が2枚目のイエローカードを受けて退場。10人になると、完全に引いて守って、1点リードを逃げ切りを図ると、結局、そのまま、MFファビオのゴールを守った熊本が1対0で勝利して、今シーズン6勝目。順位も5位に浮上してきた。一方の京都は、前半のチャンスを生かせず。ホームでの2連戦は1敗1分けに終わった。
■ 京都はチャンスを生かせず昇格争いに加わっていくために、勝ち点を積み上げていきたいところであるが、前半のチャンスを生かせずに無得点で敗れた。前半は、完全に京都のペースで、FW駒井、FW久保、FW伊藤の3トップがアグレッシブなプレーでチャンスを作ったが、精度を欠いてしまった。
ただ、シーズン序盤と比べると、チーム状態は明らかによくなってきているので、現在の順位は16位であるが、今後、浮上していく可能性は高いといえる。
チーム状態が上向きになった理由としては、FWディエゴ、FWドゥトラというブラジル人コンビをスタメンからも外す決断をしたことで、チーム全体の「守備」がよくなったことが挙げられる。この二人は、攻撃でもボールを持ちすぎてしまって、リズムを壊していたが、守備でも機能しておらず、サボるシーンが目立っていたが、代わりに入ったFW伊藤、MF加藤、FW駒井といった選手は、守備をする意識はあるので、チーム全体の守備力は上がった。
課題は、セットプレーでの守備である。高さのある選手が非常に少ないこともあって、今シーズンは、セットプレーでやられるシーンが目立っている。
■ 3トップはゴールを奪えず今後の京都の目玉になりそうな10代トリオは、この試合は不発。リーグ戦で5ゴールを挙げているFW久保が、前半にあった決定機に決められなかったのが、響いてしまった。ただ、ユースの頃から、ずっとプレーしている間柄なので、3人のコンビネーションは良くて、何度もチャンスを作った。
初先発となったFW駒井は、後半31分までプレー。得意のドリブルの切れ味は高くて、熊本のDFを切り崩すシーンもあって、先発デビュー戦であることを考えると、十分に合格点といえるプレーだった。右サイドにFW伊藤、中央にFW久保、左サイドにFW駒井が入ることが多いが、それぞれタイプの異なる選手なので、楽しみなトリオといえる。
■ DF酒井隆介が4試合連続スタメン京都は3バックを採用しているが、ストッパーの選手の攻撃力が不足していて、3バックに入る選手が効果的に攻撃に絡めないという問題を抱えていたが、右ストッパーにDF酒井を起用するようになって、状況はかなり改善されたといえる。
DF酒井は駒澤大学出身のルーキーで、名古屋グランパスのユース出身。したがって、VVVのDF吉田、ジェフ千葉のFW久保と同期になるが、182cmとパワフルでポテンシャルのある選手といえる。本来は右サイドバックであるが、右ストッパーの方が、より力を発揮できそうな選手で、ユース出身の選手だけでなく、大卒のDF酒井も、今後が楽しみな選手と言える。
■ 貴重な勝ち点「3」前半は、京都の若さに翻弄されるシーンが多かった熊本だったが、MFファビオを投入して起点が出来ると、そのMFファビオが決勝ゴール。高木監督にとっては、「してやったり」の展開でアウェーで貴重な勝ち点「3」をもぎ取った。
これで、熊本は勝ち点「23」で5位となったが、13試合を終えて、すべて「ドロー」か「1点差」の試合で、最終的に、2点差以上の得点差が付いた試合はなくて、タフな試合が続いている。たまにでも、大勝の試合があると、選手を休ませたり、新しい選手を試したりすることができるので、その辺りは、マイナスであるが、粘り強く戦って、勝ち点をもぎ取るスタイルがチームに浸透している。
■ MFファビオが決勝ゴール決勝ゴールを決めたのはMFファビオで、ようやく今シーズン初ゴールとなった。これまで、決定機を作りながらもゴールが奪えず、スタメンから外れる試合も出てきたので、本人にとっては、気持ちの落ち着くゴールとなったはずである。
そのゴールは、難易度の高いオーバーヘッドでのゴールとなった。「オーバーヘッド」でのゴールは、マンガの世界では「決め技」の1つで、オーバーヘッドシュートが決勝ゴールとなる展開も多くて、誰もが憧れるシュートであるが、現実の世界ではなかなか難しくて、Jリーグでも、年に2回・3回くらいの頻度である。MFファビオにとっては、一生の思い出となるスーパーゴールとなった。
■ 漫画のようなゴールこのMFファビオのゴールは、クリーンヒットしたシュートで、かなりきれいな形のオーバーヘッドシュートだったが、オーバーヘッドからのゴールで、最も印象的なのは、2009年にヴィッセル神戸のDF宮本恒靖が川崎フロンターレ戦で決めたゴールである。
試合終了間際の同点ゴールだったこと、クリーンヒットしてネットに突き刺さったこと、左サイドからのクロスに対して、自ら胸トラップしてオーバーヘッドしやすい位置にボールを上げてから決めたゴールだったことなど、全てがパーフェクトで、マンガの世界のオーバーヘッドシュートだった。
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