■ 準々決勝アジアカップの準々決勝。地元のカタールと日本の対戦。準々決勝は、他に、ウズベキスタンとヨルダン、韓国とイラン、オーストラリアとイラクの試合が行われる。日本とカタールの過去の対戦は1勝2敗4分けとカタールが勝ち越している。カタールはグループリーグは2勝1敗の2位で進出してきた。
日本は<4-2-3-1>。GK川島。DF伊野波、吉田、今野、長友。MF遠藤、長谷部、岡崎、本田圭、香川。FW前田。サウジアラビア戦に出場できなかったGK川島、MF本田圭がスタメンに復帰。DF内田は出場停止。右サイドバックはDF伊野波が入った。カタールは帰化した選手が23人のうち5人もメンバーに入っており、特にウルグアイ出身のFWセバスチャンが要注意人物である。
■ 前半は1対1立ち上がりの日本はやや低調。ミスが目立っていい形を作れない。すると前半12分にカタールのロングボールに対してオフサイドを取れずにFWセバスチャンがフリーで抜け出す。DF吉田が対応するがかわされて左足でシュート。これが決まってカタールが先制する。ロングボールに対してオフサイドトラップをかけたが、手前サイドのDF伊野波が残っていたのでオフサイドではなかった。
リードを許した日本だったが、前半28分に中央でMF本田圭がボールを持って右サイドのMF岡崎へ浮き球のパス。MF岡崎がループでシュートを狙うと、最後は逆サイドのMF香川が頭で押し込んで1対1の同点に追いつく。MF香川はアジアカップは初ゴール。Aマッチでは9月のパラグアイ戦以来の通算4ゴール目となった。前半は1対1で折り返す。
■ 伊野波が逆転ゴール後半は立ち上がりからカタールがペースを握る。後半16分には日本のパスミスから左サイドに引き出されたDF吉田が相手を倒したとして2枚目のイエローカードを受けて退場。10人になってしまう。日本はすぐにDF岩政を投入する準備を始めたが、直後の右サイドからのフリーキックを直接決められて1対2と再びリードを許す。
10人になった日本はFW前田を下げてDF岩政を投入。MF本田圭の1トップ気味の布陣にする。苦しい展開になったが、後半25分にMF本田圭のパスからMF岡崎が抜け出すと、こぼれ球をMF香川が相手DFをかわしてGKと1対1になると、落ち着いて左足でシュート。これが決まって2対2の同点に追いつく。
さらに、日本は後半44分にもMF長谷部のパスからMF香川が裏に抜け出すと、最後はGKもかわしてシュート体勢に入る。これは相手にブロックされるが、DF伊野波がこぼれたボールを無人のゴールに流し込んで3対2と逆転に成功する。DF伊野波は代表初ゴール。MF香川は3ゴールに絡む活躍。
その後、MF香川に代えてDF永田を投入。5バック気味の布陣に変更してリードを守ろうとする。最後にセットプレーが続いたが、何とか逃げ切って、日本が3対2で劇的な逆転勝利。見事に準決勝進出を決めて、イランと韓国の勝者と決勝進出をかけて対戦することになった。一方のカタールは、地元開催のアジアカップは「ベスト8」という戦績で終えることになった。
■ アウェーに苦しむ明らかなミスジャッジはなかったが、イーブンのプレーではほとんどがカタール有利となる地元びいきのレフェリングに苦しめられて後半途中で10人になってしまったが、素晴らしい粘りで逆転勝利を飾って最低限のノルマであるベスト4進出を決めた。DF吉田が退場になった直後のフリーキックを決められたときは「ダメか。」と思ったが、後半25分のMF香川の同点ゴールが非常に大きかった。
シリア戦でも感じられたことであるが、中東のチームは勢いに乗ったときはもの凄い力を発揮するが、ちょっと劣勢になると必要以上に落胆する傾向がある。日本が同点に追いついた時点では「2対2」のスコアであり、カタールが数的優位な状況だったにもかからわず、もう一度、モチベーションを上げることが出来ずに、飲まれたままで試合を進めて、DF伊野波に決勝ゴールを決められてしまった。
ジャッジに味方されたとはいえ、カタールは帰化選手も多く、技術的には優れた選手も多い好チームであった。ただ、まだ寄せ集めの感じは否めない。地元で行われるW杯は11年後となるが、2022年までにどれだけまとまりのあるチームを作れるかだろう。もちろん、2022年の前に自力でワールドカップ出場を果たしてから、自国開催を迎えないといけないというプレッシャーもある。今後、カタールにも注目していかなければならない。
■ 失点のシーンカタールの先制ゴールのシーンはDF伊野波のポジショニングミスがあったことに加えて、DF吉田のFWセバスチャンへの対応も軽くて、防ぐことのできた悔やまれる失点だった。DF伊野波は代表では2試合目であり、連携が十分ではなかったのだろうか。リプレーで見る限りは、明らかにオンサイドであり、副審はよくジャッジしたといえる。
2失点目は10人になった直後で、うまく意思統一がされていないところに、際どいボールが入ってきて防ぐことが出来なかった。壁の枚数は「1枚だけ」だったが、これが妥当だったかも議論の余地はあるが、GK川島のポジションも理解できないものであり、もったいない失点ではあった。
今大会はこれで4失点となったが、すべて複数個のミスが絡んだときの失点であり、イージーなミスが出て試合を苦しくしている点は気になるところである。準決勝では気を付けないと取り返しのつかないことになる。
■ 香川が2ゴール 試合を決めたのは、グループリーグでは不発だったMF香川。これまでは「らしいプレー」があまり見せられていなかったが、大事な試合で2ゴールをマーク。さらに決勝ゴールとなったDF伊野波のゴールもMF香川がお膳立てしたものであり、3つのゴール全てに絡む活躍だった。まだ、中盤のエリアで不用意なミスも多いが、ゴール前で力を発揮できるのは強みであり、ようやく「10番」の仕事を果たしたといえる。
大きかったのはやはり2点目の同点ゴールである。狭いスペースでボールを扱う技術は日本人の中ではずば抜けており、相手をドリブルでかわしてから利き足ではない左足でシュートに持っていけるのも魅力である。10人になったことで、「1トップ+3人」から「1トップ+2人」になって、ポジションが左サイドから中央よりになったこともMF香川が生きた理由だった。
終盤になってリードしているチームは人数をかけてスペースを消して守りきるので、なかなか中央をこじ開けるのは難しいが、2点目のゴールはまさしく「こじ開けたゴール」であり、これまでの日本代表では見られなかった形のゴールである。「点が獲れないこと」が大きく報道されていたが、これで吹っ切れるだろう。「20億円以上」という話も出てきている移籍金の値段分の価値を示したといえるだろう。
■ 好調を維持する岡崎日本はMF岡崎がサウジアラビア戦に続いて右サイドで先発出場。この日も、前半から裏への飛び出しが抜群で、何度も惜しいシーンを作った。右サイドが基本のポジションであるが、中央や左に進出してくるので、相手にとってはマークがしずらい。MF香川の1点目のゴールはMF岡崎のゴールといっても差し支えないものであり、今大会、多くのゴールに絡んでいる。
MF岡崎の良さは、点を取るだけでなく、「それ以外の仕事もこなしつつシュートシーンに絡むことが出来る点」にある。運動量も豊富なので、MF岡崎が右サイドからポジションを変えていっても、そのMF岡崎のスペースを守備のときに突かれることもほとんどない。非常にいい状態を保っており、アジアカップの後、ドイツのシュツットガルトへの移籍が濃厚になっているが、新天地でもいいパフォーマンスを見せられるのではないだろうか。
■ 前田は起点になれず一方で、FW前田はこの試合はうまく起点になれなかった。レフェリーがカタールのファールをあまりとらなかったこともあって、カタールのディフェンダーが思い切ってFW前田にアタックできたという理由もあるが、パスの精度を欠いて味方に合わないシーンが多かった。サウジアラビア戦で2ゴールの活躍を見せて波に乗ってきたかと思われたが、この日は持ち味を発揮できなかった。
シリア戦に続いて10人になったことでFW前田がDF岩政と交代になったが、10人になったことでスペースが出来て、MF香川やMF岡崎もMF本田も負担は大きくなったが、動ける範囲が広がるので、やりやすそうにプレーできていた。
ザッケローニ監督の考え次第であるが、次の試合は攻撃力のあるイランか、韓国が相手となる。MF本田拓かMF細貝をアンカーに置いて、<4-1-2-2-1>で、MF本田圭の1トップで、その下にMF岡崎とMF香川を並べるというのも効果的かもしれない。
■ 決勝ゴールは伊野波決勝ゴールを決めたのはDF伊野波。こぼれたボールに反応して、無人のゴールに流し込んだ。DF内田の代わりに先発で出場したが、攻守にミスが多く、危ないシーンも多かったが、最後の最後で大仕事をしたといえる。
もともと、キックの精度は高い選手であるが、慣れていないサイドバックでのプレーということで、後半は疲れていたのか、クロスの精度が落ちてしまった。このままでは「苦い先発デビュー」になってしまうところであったが、いいところにボールがこぼれてきて、一転して「大ヒーロー」になった。主役のMF香川やMF本田圭らがゴールを決めるとチームは落ち着くが、予期せぬ脇役が大事なところでゴールを決めると、チームは乗っていくことが出来る。
もし延長になっていたら、疲労もたまっており苦しい展開になったことは確実だったので、チームを救う上でも、自身を救う上でも、価値あるゴールとなった。
■ 苦しんだ吉田麻也一方で、DF吉田はFWセバスチャンへの対応で苦しんだ。後半開始早々にファールでイエローカードを受けたときから「危ない雰囲気」はあったが、後半17分に微妙な判定で2枚目のカードを受けてしまった。
FWセバスチャンは体の使い方もうまくて、接触プレーがあるとすぐに倒れてフリーキックを得ようとしていた。もともとそういうプレースタイルなのか、この試合のレフェリーの傾向を考えたクレバーなプレーだったのかは分からないが、何度かこの二人がもつれるシーンがあって、いつ2枚目のカードが出てもおかしくない雰囲気になっていた。
DF岩政がベンチに控えているので、ザッケローニ監督が選手交代をするかな?と思ったが、さすがに延長も考えるとセンターバックでカードを切るわけにもいかず、そのままDF吉田にプレーさせたが、早い時間帯に2枚目のカードをもらってしまった。DF吉田にとってはいい経験になっただろう。
■ これでベスト4これでベスト4。シリア戦に続いて苦しい試合となったが、南アフリカW杯で得た自信は大きいのか、退場者が出ても、不利なジャッジが続いても、全く動じない「精神的な強さ」が見られるようになってきた。中心はキャプテンのMF長谷部であり、10人になっても日本が攻めることが出来たのは、ボランチの位置で獅子奮迅の活躍を見せたMF長谷部の活躍による部分も大きかった。
次の試合はDF吉田が出場停止。そのままDF岩政が先発となって、さらにDF伊野波に代わってDF内田がスタメンに戻ってくることだろう。まだザッケローニ監督になってから7試合目ということもあって、チームの完成度は高くはないが、気持ちの入ったプレーを見せており、苦しい試合を勝ちきってきたという流れも非常にいい。イラン、韓国、オーストラリアといったチームは非常に強いが、2004年以来のアジア制覇を期待したいところである。
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本田と岡崎の縦の関係はいいですねー
日本の新たな武器ではないでしょうか
もちろんそこに香川が加わり、本田も積極的なミドルなんかで本来の攻撃センスを活かせれば文句なしですね!!
吉田の守備の軽さは目に付きましたが、やっぱり189cmというのは魅力的。これを苦い経験として次に繋げてほしい!
香川の2ゴールは素晴らしかったです!!
特に2点目のゴールはよかった!!
これで日本代表は準決勝進出なので、
次の試合もがんばってほしいです!
香川・本田・岡崎の3人は本当に素晴らしかった
優勝目指して頑張れ日本!
吉田退場でまじ焦ったけど、
とりあえず勝ててよかった!
今年は優勝してほしい!
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