■ 第36節J2の第36節。19勝9敗5分けで3位のアビスパ福岡は、4位のジェフ千葉との勝ち点の差が「5」。残りは3試合なので、36節で福岡が勝利して、千葉が引き分け以下に終わると、福岡のJ1昇格が決定する。千葉の試合は福岡の試合の後に行われるので、福岡は勝利して吉報を待ちたいところである。
迎え撃つはFC岐阜。岐阜はJ2で3年目で12勝16敗5分け。3連敗中と調子を落としている。今シーズンのホームゲームは残り2試合。勝って意地を見せたい。
ホームのFC岐阜は<4-2-2-2>。GK野田。DF新井、吉本、秋田、村上。MF菅、橋本、西川、染矢。FW嶋田、押谷。DF新井、FW押谷がロンドン世代。磐田からレンタル中のFW押谷は今シーズン9ゴールを挙げている。DF新井は大宮のユース育ちである。
アウェーの福岡は<4-2-2-1-1>。GK神山。DF山形辰、丹羽、田中誠、中島。末吉、中町、久藤、永里。FW大久保、城後。35節の東京ヴェルディ戦のロスタイムに劇的なフリーキックを決めたFW高橋はベンチスタート。MF永里が出場停止明け。今シーズンは13ゴールを挙げている。
■ 永里源気が2ゴール 試合はアウェーの福岡が立ち上がりから攻め込むと、前半10分にコーナーキックのこぼれ球をMF永里が押し込んで幸先よく先制に成功する。その後はややペースが落ちてチャンスは作れなくなるが、前半は守備陣が集中して守って1対0とリードして折り返す。
後半になるとホームの岐阜がスピードに乗った攻めでチャンスを作るようになる。後半開始から岐阜のリズムで試合が進んでいたが、後半26分に福岡が再びMF永里のゴールで追加点を挙げる。MF永里は2ゴールの活躍で今シーズンは15ゴールとなった。
結局、試合はそのまま2対0で福岡が勝利。17:00キックオフの試合で4位のジェフ千葉が0対2でザスパ草津に敗れたため、福岡の3位以内が決定。2006年以来となるJ1復帰を果たした。
■ 岐阜は連敗0対2で敗れたFC岐阜は4連敗となった。横浜FC、柏、鳥栖、福岡と力のあるチームとの戦いが続いているとはいえ、4試合連続で無得点。暫定順位は14位と後退してしまった。早い時間に先制ゴールを奪われたが0対1で前半を折り返すと、後半は猛攻を仕掛けると、今シーズン、ブレークを果たしたFW押谷を中心にスピードのある攻撃でゴールに迫ったが、FW押谷が負傷でピッチを去ると、攻撃はかみ合わなくなった。
1点ビハインドの後半20分にFW押谷に代えてFW朴基棟、後半24分にMF染矢に代えてFW佐藤洸を投入させたが、この交代がうまくいかずに意図も不明瞭だった。サイドからクロスを上げてゴールを狙うのか、ドリブルで仕掛けてチャンスを作るのか、曖昧になってしまった。
■ 厚みが出なかった攻撃この日の岐阜は、FW押谷、FW嶋田の2トップで、さらにMF染矢もスタメンで起用。機動力のある選手と、長身のMF西川を組み合わせる攻撃陣で臨んで、まずまずのチャンスは作ったが、攻撃の厚みという点では物足りなかった。
気になるのはサイドバックであり、右がDF新井、左がDF村上を起用したが、サイドを駆け上がってクロスを上げるというシーンはなく、守備面での貢献にとどまった。昨シーズンは、右にDF富成、左にDF秋田を起用し、サイドバックの積極的な攻撃参加が活性化させていたが、倉田監督になってからは、サイドバックの攻撃参加は控え目になっている。
■ 押谷は不発昨シーズンの岐阜は、FW佐藤とFW西川という長身コンビの2トップが機能したが、この試合ではFW押谷とFW嶋田という小型コンビで2トップを組んでいる。昨シーズンまではサイドハーフだったMF嶋田がフォワードに回って、フォワードだったFW西川がサイドハーフに回るという面白い配置転換を行っている。
前線に高さがなくなったことも、サイド攻撃の頻度が減っている要因であることは間違いないが、昨シーズン16ゴールを挙げたFW佐藤に代わって今シーズン、エースストライカーになったのが、FW押谷であり、前述のように9ゴールを挙げている。
磐田に所属していたが、フォワードの層は厚いので、ほとんど出番がなかったが、昨シーズン途中に岐阜にやってきて、非常にいい経験を積んでいて、プレーにも落ち着きが出てきて、プレシーズンの頃とは見違えるような存在感である。
■ 5年ぶりのJ1一方の福岡は岐阜戦の勝利で昇格にリーチをかけて、夕方の千葉の試合を待つことになったが、千葉が0対2で敗戦したことで、悲願の昇格が決定した。2006年に入れ替え戦で敗れてJ2に降格したが、2007年、2008年、2009年と3年連続で昇格に失敗。強化方針が一定でなくて、2007年のオフには準主力級の選手が大量に放出されるなど、苦しい時期もあったが、4回目でつかんだJ1の切符であった。
シーズン前の評価は芳しくなく、助っ人外国人もいなかった。ほとんど日本人だけのチームであり、2009年のオフの補強は学生がほとんどで、戦力の上積みは乏しいと見られていたが、MF永里、MF中町、MF末吉の新戦力が多大な貢献をして、チームを昇格に導いた。
MF中町は湘南ベルマーレでプレーした経験があるので、大学卒ではあるが未知数のルーキーというわけではなかったが、新加入の大卒二人にボランチを任せるというのはギャンブルであり、不安視されたが、シーズンを通してポジションを守り通した。特にMF中町は10ゴールを挙げていて、チームの得点源の1つにもなった。
■ 自前のチーム 資金不足という理由もあるが、今シーズンの福岡は自分のところで育てた選手が多く、補強に頼りがちなチームとは一線を画す。前述のMF中町とMF末吉は大卒の新人であり、FW城後やGK神山は生え抜きの選手である。さらに、FW大久保やMF永里といった選手は、他チームでは花開かなかった選手で、福岡に来て成長を遂げた選手である。FW高橋、DF丹羽、DF田中といった選手は実績十分であるが、核になるポジションのほとんどが自前である。この点は見事である。
ただ、裏を返すと、他チームでの実績の乏しい選手がほとんどであるということで、J1経験が豊富な選手は、(DF田中誠は別格であるが、)ほとんどいないのが現状である。J1という舞台で、MF永里、MF中町、MF末吉といったキーマンがどの程度のプレーができるのかは未知の部分が多く、楽しみではあるが、不安な部分でもある。
■ 永里の覚醒昇格に大きく貢献した選手を一人挙げるとすると、東京ヴェルディから移籍してきたMF永里源気になるだろう。湘南や東京Vでは、どちらかというとユーティリティプレーヤーとして使われており、試合を決定付ける選手とは見られていなかった。そのため、シーズン前の期待値もそれほど高くはなかったが、開幕戦から見違えるようなプレーでチームを引っ張った。チーム内のMVPを選ぶとしたら、ディフェンスリーダーのDF丹羽も捨てがたいが、MF永里になるのではないだろうか?
左サイドハーフというのがベースのポジションであるが、このポジションでは破格の15ゴールを記録している。積極的なドリブルからの仕掛けとシュートで、一気にチームの中心となった。助っ人外国人がおらず、攻撃の核となれる選手がいなかったチームを変えて見せた貢献度は高い。1985年生まれでプロ7年目。これまでずっとJ2のチームでプレーしていたので、来シーズンは初のJ1となる。この選手がどれだけJ1で通用するかが、福岡にとって大きなポイントになるだろう。
■ 目標は残留J1から降格するチームはまだ1つ決まっていないが、J2からは柏、甲府、福岡が昇格することになった。神戸が降格するのか、FC東京が降格するのかは分からないが、いずれにしても、現状では福岡の戦力が見劣りするのは否めないところであり、1年目は「残留」が大目標となる。
助っ人となる外国人がいないので、力のある外国人選手を見つけたところで、ベテランのDF田中の後釜になるセンターバックは必須であるが、難しいのは、MF永里、MF中町、MF末吉、FW城後らのポジションであり、FW城後には2006年にJ1経験があるが、他の選手はどの程度のプレーが出来るかは、読めないところがある。J2では活躍できても、J1になると「さっぱり」という選手もいるし、意外と上のリーグでも問題なくプレーできる選手もいる。それぞれなので、どのポジションを補強するのか、というのは非常に悩ましい部分である。
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