■ 第5節 リーグ戦に加えて、ヨーロッパのカップ戦もスタートし、週に2試合というハードスケジュールが続くドルトムント。今週はリーグ戦の第5節がミッドウイークに行われる。対戦相手はカーザースラウテルン。カーザースラウテルンは4年間、2部リーグで戦ってきて今シーズンから1部に復帰。4試合を終えて2勝1敗1分け。2節でバイエルン・ミューヘンに2対0で勝利している。クロアチア人のFWラキッチは4試合で4ゴールを挙げている。
3連勝中のボルシア・ドルトムントは<4-2-3-1>。GKヴァイデンフェラー。DFピズチェク、スボティッチ、フメルス、シュメルツァー。MFベンダー、サヒン、ブラスチコフスキ、香川真司、グロスクロイツ。FWルーカス・バリオス。DFオヴォモイェラとMFゲッツェがスタメンから外れて、DFピズチェクとMFブラスチコフスキのポーランド人コンビがスタメン。MF香川は5試合連続でトップ下でスタメン。
■ 5対0の勝利 試合の序盤はアウェーのカイザースラウテルンのペースで進む。連動した守備でドルトムントの中盤を封じて、素早いカウンターで攻め込む。序盤のMF香川はボールロストが多く、なかなか波に乗れない。しかし、前半31分にドルトムントがMFサヒンの右足のスルーパスからFWバリオスが決めて先制する。劣勢だったドルトムントにとっては大きなゴールとなった。
さらに前半38分にもMFサヒンのパスが起点になってゴールが生まれる。MFサヒンのパスを左サイドで受けたMFグロスクロイツがドリブルから右足でシュート。これが鮮やかに決まって2対0とリードを広げる。MFグロスクロイツは今シーズン初ゴール。2対0で前半を終える。
後半は完全にドルトムントペース。2失点で意気消沈したのか、「序盤の質の高いサッカー」が嘘のようにカイザースラウテルンが失速する。この時間帯にMF香川にも何度かチャンスが訪れたが、特に惜しかったのは左サイドのMFグロスクロイツからのパスを受けて、相手をリフティング気味にはずして右足でシュートを放ったシーン。完全にフリーでGKと1対1になったが、シュートコースが甘くてGKにセーブされてしまった。
押せ押せのドルトムントは後半20分にもMFサヒンのアシストからDFフメルスがへヘディングシュートで決めて3点目を挙げる。トルコ代表のMFサヒンは3アシストの大活躍。連戦ということもあってMF香川は後半22分で交代。そのMF香川に代わってピッチに入ったFWレワンドフスキが4点目を決めると、後半43分にFWバリオスが決めて5点目を挙げる。パラグアイ代表のFWバリオスは2ゴール。
結局、攻撃陣が爆発したドルトムントが5対0で圧勝。4連勝で2位に浮上。開幕5連勝と絶好調の首位・マインツを追う形となった。
■ 見事に4連勝 開幕戦のレバークーゼン戦の試合を見たときはどうなることかと思われたドルトムントだったが、それから4連勝。4連勝中は13得点2失点と見事な戦いを見せている。3節はヴォルフスブルク、4節はシャルケと「戦力がありながらも調子の出ていないチーム」との対戦が続いたというラッキーな面もあったが、この日のカイザースラウテルンは昇格組ながら好スタートを切ったチーム。実際に最初の30分は素晴らしい出来だったが、ドルトムントが1点を先制すると完全にドルトムントのペースとなった。
ドルトムントは若い選手がほとんどであるが、特に、MFサヒン、MFグロスクロイツ、DFフメルス、DFスボティッチ、MF香川と22歳前後の選手が多数を占める。そんな構成の中、若さを生かした「運動量豊富なサッカー」がはまってきている。「守」から「攻」への切り替えが非常に早くて、ボールを奪われてもすぐに数人で囲んで取り返してしまうので波状攻撃が可能となる。
シーズン開幕前は5位あたりの順位予想が多かったが、シャルケ、ヴォルフスブルク、シュツットガルトといった有力チームがスタートで躓いていて、チャンピオンズ・リーグの出場権の獲得も十分にありえるだろう。
■ 3戦連発はならず 「ルール・ダービー」で2ゴール。ダービーの主役となったMF香川だったがリーグ戦の3試合連続ゴールはならなかった。試合前からテレビカメラに抜かれるシーンが多く、ドルトムントのサポーターからは「ARIGATOU KAGAWA SHINJI」という日本語の横断幕が出されるなど、すっかりサポーターの心をつかんだ感のあるMF香川。波に乗ってゴールを量産といきたかったが、小休止となった。この日は「Not His day」という感じで、3度ほど決定機がありながらも決めきれなかった。
コンディション自体は悪くなく、ドリブルで仕掛けていけば高い確率で打開できるはずであるが、チームに加入して3ヶ月ほどであり、あまり独りよがりになるのは好ましくない。「ドリブルをするのか」、「簡単にパスを出すのか」、この判断を的確に出来るかどうかが、現時点で一番の課題といえるが、この日は、簡単にパスをはたこうとして奪われるシーンが多かった。
■ トルコ代表のMFサヒン この試合の「マン・オブ・ザ・マッチ」は誰がどう考えてもトルコ代表のMFサヒンだろう。ボランチの位置からゲームを組み立てて、なおかつ、1点目・2点目・3点目のゴールをアシスト。大車輪の活躍で、ほとんど攻撃はMFサヒン経由で生まれた。
MFサヒンは16歳でブンデスリーガにデビューしている選手で22歳のレフティ。ドイツ出身であるがトルコ系の選手である。南アフリカW杯のドイツ代表でレアル・マドリードに移籍したMFエジルと同じような立場であるが、MFサヒンはトルコ代表を選択した。
このMFサヒンのプレーを見ていると、「ゲームを組み立てるレフティ」ということで元日本代表のMF名波浩を思い出させる。「トラップの仕方」や「パス出しのタイミング」がMF名波に似ているような気がするからだと思われるが、MF名波よりも現代的な選手で当たりにも強くて運動量もある。ただ、MF名波が持っていた「柔らかさ」というものは備えておらず、MF香川がバイタルエリアで瞬間にフリーになっても、そこに入れる技術というか、感覚は持ち合わせていないようで、どちらかというと堅実でドイツ的なゲームメーカーという感じは受ける。
もう少し、MF名波が持っていたような「柔らかさ」というか、「遊びの要素」があれば・・・とも思うが、この辺りは「時代」や「環境の違い」が影響しているのかと思われるが、なかなか、見ていて面白い選手である。
■ ライバルの活躍 MF香川とポジションを争う形となっているポーランド代表のFWレワンドフスキも途中出場でゴールをマーク。これでシャルケとのダービー・マッチに続いて2試合連続ゴールとなった。MF香川も5試合で3ゴールを挙げているが、FWバリオスも5試合で3ゴール、FWレワンドフスキも4試合で2ゴールをマークしていて、前線の選手もいずれも結果を残している。
ドルトムントは<4-2-3-1>であるが、クロップ監督は、FWレワンドフスキに関しては、1トップのFWバリオスの位置ではなくて、トップ下のMF香川の位置で使うことが多い。プレシーズンではFWレワンドフスキが途中から入ってくると、MF香川のポジションがトップ下から右サイドハーフに移ることが多くて、MF香川とFWレワンドフスキが共存していたが、ダービーに続いてMF香川とFWレワンドフスキが交代する形になった。
もちろん、シャルケ戦も、カイザースラウテルン戦も、余裕の展開だったのでMF香川へ休息を与えるという意味もあったと思われるが、出来れば、「スタメンフル出場」を期待したいところ。もともとMF香川自身がスタミナのある選手であり、C大阪時代も試合の終盤に活躍することを考えると、途中交代するのはもったいないという気もする。
ただ、MF香川自身の成長を考えると、年の近いライバルがたくさんいて、出場が約束されていていない環境というのは望ましいことだろう。C大阪時代は、クルピ監督に攻撃的MFにコンバートされて以降、ずっとポジションを守ってきて、怪我や日本代表ゲームで欠場する試合はあったがレギュラーを外れたことはなく、完全に試合が決まった時以外は交代することもほとんどなかった。少しでもパフォーマンスが悪くなったり、疲れの色が見えてきたりすると、ポジションを奪われかねない環境というのは、さらなる成長につながるはずである。あまり同じポジションのライバルに活躍されると日本で見ているサポーターはちょっと複雑な気持ちになってしまうが、結果を残して地位を確立していってほしいところである。
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香川関連のコラムを読ませてもらいました。ドルトムントの試合レポはなかなか読めないので非常に助かります。
これまでこちらのサイトが存在するのは知っていましたが、新着エントリーと人気ランキングが画面の上部を占領してしまっていて、リンクをクリックしても画面に出てこないのでコラムの存在に気が付かずにサイトを離れていました(今回は偶然見つけましたが)。なので、コラムはランキング一覧よりも上にあった方がいいと思います。
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