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【書評】 前園真聖のあまり知られていないキャリアの後半戦 | | このエントリーを含むはてなブックマーク | 

■ 28年ぶりのオリンピック

今、振り返ってみると、その期間は、かつての「安土・桃山時代」のように非常に短い時間ではあったが、それでも日本サッカー史の中には、「カズの時代」と「ヒデの時代」の間には、「ゾノの時代」があったと思っている。

現ガンバ大阪の西野朗監督が率いたアトランタ五輪代表チームには、5人のスター選手がいた。横浜フリューゲルスのMF前園真聖、名古屋グランパスのFW小倉隆史、ジェフ市原のFW城彰二、横浜マリノスのGK川口能活、ベルマーレ平塚のMF中田英寿。

その中でも、キャプテンだったMF前園真聖の活躍は際立っていた。1996年3月24日に行われたアトランタ五輪のアジア最終予選の準決勝。アジア最強と言われたサウジアラビアを相手にMF前園真聖は2ゴールの大活躍を見せる。その2つのゴールは、ともに、キャプテンが自ら、独りで中央をこじ開けてつかみ取ったファインゴールだった。

当時の日本サッカーは、ワールドカップの本大会に出場した経験はなかった。オリンピックからもメキシコ五輪以来、28年間、遠ざかっていた。今では、ワールドカップ出場も、オリンピック出場も、当たり前の出来事のようになってしまったが、当時のスタンダードでは、オリンピック出場は夢であり快挙といえた。

その日、彼は、日本サッカーの新しいヒーローになった。

■ 暗転したキャリア

MF前園のキャリアの転機となったのは1996年の秋から冬にかけてのことである。

MF前園の下には、スペインリーグの中堅クラブであるセビージャから獲得のオファーが届いていた。本人もスペインに挑戦するつもりで準備を始めていたが、結局、横浜フリューゲルスとセビージャの間で移籍金の差が埋めきれずに、御破算となった。1994年からの1年間、イタリアのジェノアでプレーしたFW三浦知良ら幾つかの例外を除いて、日本人選手の中で、海外のクラブに移籍しようとする選手はいなかった。クラブ側も海外移籍を希望する選手をどう扱えばいいのか、どのように海外のクラブと交渉すればいいのか、知らなかった。「Before NAKATA」の時代である。

セビージャへの移籍の可能性が消滅したことで、彼は著しくモチベーションを落とした。サッカーの世界では、希望していた移籍が不成立に終わるということは、そう珍しいことではないが、当時のMF前園にはスペイン挑戦が全てであり、Jリーグの中にその代わりとなるようなものを見つけることが出来なかった。

結局、翌年の1997年2月になって、ヴェルディ川崎への移籍が成立するが、緑のユニフォームを着たMF前園は、以前のようなキレを取り戻せないままだった。悲願のオリンピック出場を決めたアジア最終予選から1年も経たないうちに、彼は、精神的にも肉体的にもどん底の状態となった。

1997年5月。ついに日本代表からも外れることになる。その代わりに日本代表に召集されて、攻撃的MFのポジションを確保したのは、20歳のMF中田英寿だったというのは、1つの皮肉である。

■ あまり知られていないキャリアの後半①

MF前園のキャリアの前半部分については、非常によく知られたものである。1992年に横浜フリューゲルスに入団し、1994年にはファルカン監督の下、日本代表にも召集されている。1996年には五輪代表チームのキャプテンとして、オリンピック出場権獲得に大きく貢献。本大会でもキャプテンマークを巻いて、グループリーグのハンガリー戦で2ゴール。日本代表のキャップ数は「19」にまで伸びた。

しかし、そのキャリアの中盤以降について、詳しく知っている人はほとんどいない。1998年の9月にヴェルディ川崎からブラジルの名門サントスにレンタル移籍するが、その後、どんなチームを渡り歩いてきたのか、どういう理由でそのクラブを去らなければならなかったのか、そして、いつ、どのようにして現役を引退することを決意したのか?

この本は、そのキャリアの中盤以降の苦悩の日々にスポットライトが当てられている。

簡単に記述すると、1998年9月にブラジルのサントスにレンタル移籍し、翌1999年には同じブラジルのゴイアスに移籍する。起用方法への不満もあって、ゴイアスとの契約が満了する前に帰国。ここで無所属となる。その後、ポルトガルのギマエラスの練習に参加するも本契約には至らず。次にギリシャに向かうが、ここでも契約には至らず。再び、無所属となる。1999年の秋のことである。

2000年、欧州へのあこがれやプライドを全て捨てて、J2の湘南ベルマーレに移籍する。当時のJ2は、日本代表経験のある選手が存分にプレー出来るような環境ではなかったが、チームの主軸としてプレー。38試合で11ゴールを記録し、久々にフルに働くことの出来たシーズンとなったが、翌2001年に、川崎から東京にホームタウンを移転したばかりの東京ヴェルディに復帰するも、ほとんど出番なし。シーズン途中の大怪我もあって、翌2002年7月に突然、戦力外通告を受ける。あの日韓ワールドカップから間もない頃の出来事である。

その後、韓国のKリーグを目指す。城南とは契約には至らなかったが、安養への入団が決定。シーズン当初はスタメン出場を続けていたが、途中で構想から外れてしまう。2004年シーズンは同じKリーグの仁川でプレー。2004年をもってKリーグでのキャリアは終了する。このとき31歳になっていた。

引退を決意したのは、2005年5月のことである。遠いセルビアの地で、彼は引退を決意する。OKFベオグラードへの入団テストが不調に終わった時、現役への未練はなくなった。引退した時、彼が入団テストを受けたクラブ数は、「10」に限りなく、近づいていた。


※1 1999年9月にブラジルのサントスにレンタル移籍。そのデビュー戦となった1999年10月18日のポルトゲーザ戦でデビュー戦ゴールを決める。思い切り放ったシュートは相手DFに当たってゴールに吸い込まれた。結局、サントスで挙げたゴールはこの1点のみであったが、そのとき、スライディングしてシュートを足に当てたのが、鹿島や川崎Fで活躍したDFアウグストだったという。

※2 ゴイアス時代のチームメイトに2005年のJリーグMVPのFWアラウージョがいた。そのFWアラウージョはMF前園の運転手役を務めたくれたという。

※3 2004年は、Kリーグの仁川に所属するが、その時にチームメイトだったのが、1998年にセレッソ大阪に所属したFWマニッチと2007年にヴァンフォーレ甲府でプレーしたFWラドンチッチ。親交を深めたMF前園は彼らの母国であるセルビアのサッカーに興味を抱く。それが、セルビアの地で引退を決意することにつながっていく。 

※4 セルビアの地で引退を決意したMF前園。セルビアでサポートしてくれたのは2001年と2002年に清水エスパルスで監督を務めたゼムノビッチ氏だった。OKFベオグラードとの契約が思うように進まなかったとき、「ゼムさん、オレ、決めました。もうサッカーをやめます。」と話した。


■ あまり知られていないキャリアの後半②

正直、MF前園真聖という選手のことはよく知っていたつもりになっていたが、キャリアの中盤以降、彼が、これだけの苦労をして来たというのは知らなかったし、また、知って良かったと思う。

1996年に横浜フリューゲルスを退団した後、まともにプレー出来たのは湘南ベルマーレに所属した2000年の1シーズンくらいであり、それ以外は、世界中のクラブを転々とする日々であった。日本代表として19のキャップを持つ選手がこれだけ所属クラブを探すことに苦労しなければならないのかと・・・。プライドもあったはず。30歳を超えてから、ヨーロッパの中では一流とはいえない国のスモールクラブで、テスト生としてテストされなければならない状況。非常に厳しいものであっただろうと想像する。

1996年3月24日。彼がつかみ取ったアトランタの切符は、これから訪れる素晴らしいキャリアのスタート地点を示すものであるかのように思えたが、実は、その日は、彼にとって、サッカー選手としてのピークの日であり、ここから先は、下り落ちていくしかない運命にあった。

■ スターシステムの被害者

彼については、自業自得の面もある。なぜ、セビージャ移籍が消滅した時、新たなモチベーションとなる何かを見つけられなかったのか?少なくとも、当時は、A代表の中心の1人として考えられていており、翌年にはフランスワールドカップ予選もスタートする。アトランタに続く、夢の舞台は手の届く位置にあった。

その一方で同情すべき部分もある。MF前園は、Jリーグ誕生以後に生まれた初めての日本人スターであり、アトランタ行きが決まってから、メディアは、彼を必要以上に持ち上げた。(そして、持ち下げた。)セビージャへの移籍騒動の中、彼はメディアから凄まじいバッシングを受けることになる。そこで擦り減った精神面は、ついに回復することなく、彼から最大の武器であった「キレ」を奪っていく。大きな怪我をしたわけではない。が、大きな心の傷を抱えながら、プレーせざる得なくなった。

MF前園真聖のキャリアは多くの人にとって、期待外れのものであった。アトランタ五輪代表チームで見せた輝かしいプレーを、ついに再現することなく、静かにピッチを去ることになった。本当に全盛期は短くて、その輝きは一瞬のものであったが、それでも、多くの人は、MF前園のプレー(= ドリブル突破)を忘れないままでいる。


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コメント

このコメントは管理者の承認待ちです
2010/12/08(水) 21:06:51 | |   [編集]
たしかNumberで関連記事を読んだことあります。

フリューゲルスと前園が結んだ契約書には、海外から獲得オファーがあった場合には、受ける断るの判断・返事をする前に、必ず前園へ告知するように書いてあったとのこと。

しかしフリューゲルスは、クラブ関係者が直で訪れたセビージャはともかく
他クラブからのオファーは全て前園に伝えず秘密裏に断っていた。
「前園は当クラブのサラリーに満足しているので、移籍する気はない」と勝手に前園の意向をねつ造して返事をしていたとのこと。

前園に惚れ込んで、自らオファー打診してきたサンダーランドの監督は、前園の海外志向の強さを下調べしており、フリューゲルスの対応に呆れていたそう。
他にもフィオレンティーナなどからオファーがあったらしい。

ちなみにセビージャのクラブ関係者がスタジアム観戦に訪れたときは、関係者席を初めとするアテンドの類はまったく用意されず、一般客同様にチケットを購入したとのこと。

前園を売る気が無いにしても、非道が過ぎるし
そこまでしといて、あっさりクラブ丸ごと日産に売っぱらうあたり、
クラブ首脳の質が窺い知れるところ。

モチベーション維持は選手の仕事の内だし、前園の自己責任はまぬがれない。
しかし、クラブの仕打ちが相当に前園に堪えたのは事実なんじゃないですかね。
夜ごと遊ぶようになって走れなくなった選手という印象はありますが
当時、自暴自棄になっていたと考えても不自然じゃないと思えます。

↑な事情があったせいで、以後、私は全日空を使うのを極力避けるようになってしまいました。
2010/08/11(水) 00:57:32 | URL | 名無しさん@ニュース2ちゃん  [編集]
彼の心の傷は、金子達仁氏のアトランタ五輪についての暴露本「28年目のハーフタイム」によるものが大きかったのではないでしょうか。
あと、フリューゲルスの同僚だったジーニョが、前園がオリンピック後、スター気取りで天狗になっていたと言っていたのが忘れられません。
2009/12/27(日) 08:54:47 | URL | シブコ  [編集]
前園がモチベーションを下げたと書いてありますが、モチベーションが下がった事が不調の原因というよりも、欧州を睨んでの肉体改造の失敗が不調の原因だったと思います。
2009/12/18(金) 11:44:18 | URL | aozora  [編集]

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 -----キム・ジンヒョン (18)
 -----レヴィー・クルピ (20)
 -----杉本健勇 (24)
 -----玉田圭司 (22)
 -----フォルラン (22)
 -----丸岡満 (11)
 -----森島寛晃 (16)
 -----山口蛍 (55)
 ├ファジアーノ岡山 (57)
 -----岩政大樹(40)
 -----加地亮 (24)
 -----片山瑛一 (11)
 -----渡邊一仁 (11)
 ├レノファ山口 (27)
 -----岸田和人 (20)
 -----小池龍太 (12)
 -----庄司悦大 (18)
 ├徳島ヴォルティス (51)
 -----内田裕斗 (17)
 ├カマタマーレ讃岐 (10)
 -----我那覇和樹 (25)
 -----仲間隼斗 (9)
 ├愛媛FC (45)
 -----表原玄太 (8)
 -----河原和寿 (17)
 ├ギラヴァンツ北九州 (13)
 -----風間宏希 (15)
 -----小松塁 (17)
 ├V・ファーレン長崎 (14)
 -----坂井達弥 (9)
 -----佐藤洸一 (15)
 -----パク・ヒョンジン (4)
 -----永井龍 (21)
 ├ロアッソ熊本 (56)
 -----上村周平 (10)
 -----清武功暉 (21)
 -----齋藤恵太 (8)
 -----嶋田慎太郎 (12)
 -----平繁龍一 (12)
 -----巻誠一郎 (15)

【Division 3】
 ├ブラウブリッツ秋田 (12)
 ├福島ユナイテッド (8)
 ├栃木SC (32)
 ├長野パルセイロ (10)
 -----塩沢勝吾 (11)
 ├カターレ富山 (29)
 -----岸野靖之 (12)
 -----苔口卓也 (13)
 ├ガイナーレ鳥取 (10)
 ├大分トリニータ (49)
 ├FC琉球 (9)
 ├Jリーグ・アンダー22選抜 (6)

【日本代表】
 ├アギーレジャパン(観戦記) (4)
 ├アギーレジャパン(全般) (12)
 ├アギーレジャパン(採点) (2)
 ├関塚ジャパン(観戦記) (25)
 ├関塚ジャパン(全般) (36)
 ├なでしこジャパン(観戦記) (21)
 ├なでしこジャパン(全般) (9)
 ├鈴木ジャパン(U-19日本代表) (4)
 ├98ジャパン(U-16日本代表) (4)
 ├ザックジャパン(観戦記) (57)
 ├ザックジャパン(全般) (129)
 ├ザックジャパン(採点) (32)
 ├岡田ジャパン(観戦記) (40)
 ├岡田ジャパン(全般) (45)
 ├オシムジャパン(観戦記) (20)
 ├オシムジャパン(全般) (63)
 ├反町ジャパン(観戦記) (16)
 ├反町ジャパン(全般) (24)
 ├吉田ジャパン (11)
 ├牧内ジャパン (1)
 ├城福ジャパン (2)
 ├池内ジャパン (2)
 ├布ジャパン (4)
 ├94ジャパン(吉武ジャパン) (6)
 ├96ジャパン(吉武ジャパン) (11)

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