■ 徳島県の鳴門市J2の徳島ヴォルティスのホームスタジアムである「大塚ポカリスエットスタジアム」があるのが徳島県の鳴門市。四国の北東部であり、鳴門海峡の西側に位置する人口6万人の観光都市。県庁所在地の徳島市からはJRで約40分の距離にある。
1998年に明石海峡大橋が開通。明石海峡大橋を車で渡ると、神戸から約50分、大阪から約80分。神戸から淡路島を経由して四国に入ると、すぐそこが鳴門市となる。
#1 JR鳴門駅①

#2 JR鳴門駅②

鳴門という名前は「鳴り響く狭い戸」に由来するとされている。万雷のように轟く鳴門海峡の渦潮は、メッシーナ海峡(イタリア)、セーモア海峡(カナダ)とともに「世界三大潮流」に数えられる。
#3 明石海峡大橋
■ メカニズムについて「なぜ、鳴門が渦潮で有名なのか?」については、以下の理由からである。何度、読んでも、理解するのは難しい・・・。
Q. なぜ、鳴門海峡に速い潮流ができるのか?
A. それは、太陽と月の引力によって生じる潮汐(ちょうせき)によるのです。潮の満ち引きは、太陽や月の引力などによって発生します。特に、月の引力は地球に近い分大きな影響力を及ぼします。
地球の自転と共に、月は東から西へ移動していきます。月の引力によって海面が引き上げられ、潮位を上げながら月の運航を追いかけていきます。太平洋沖合いから西へ伝播してきた潮汐は、瀬戸内海の入り口・紀伊水道で2つに分かれ、一方は鳴門海峡南側へ到達し、満潮を迎えます。もう一方は友ケ島へと向かい、大阪湾・明石海峡を経由して、鳴門海峡北側へと到達します。
鳴門海峡北側が満潮になった時、南側が満潮を迎えてからすでに約5時間が経過しており、干潮となっています。それによって水位に差が生じ、潮位の高い方から低い方へ、つまり北から南へと潮が流れます。この流れを『南流』と呼びます。
そして約6時間後(1周期12時間として約半分) には逆に鳴門海峡北側が干潮になると南側が満潮となり、南から北へと流れます。この流れを『北流』と呼びます。
このような干満差は一日4回、毎日繰り返されています。(http://www.uzusio.com/uzu.html)
#4 飛島の様子

渦潮の見ごろは、満潮や干潮の前後1時間といわれている。鳴門に行くときには、事前に観潮に最適な時刻をチェックしておきたい。ちなみに、季節でいうと春が見ごろということである。
#5 鳴門公園からの風景

#6 渦潮の発生原因
■ 鳴門総合運動公園へ徳島ヴォルティスのホームスタジアムである「大塚ポカリスエットスタジアム」はJRの鳴門駅から徒歩で約20分。バスで向かうという方法もあるが、自然を感じながら歩いて行くのがベストか。
#7 スタジアムへの道①

#8 スタジアムへの道②
■ ネーミングライツ2007年1月からの5年間、徳島県と大塚製薬の間でネーミングライツに関する契約が結ばれており、
運動公園 → 鳴門・大塚スポーツパーク
陸上競技場 → ポカリスエットスタジアム
野球場 → オロナミンC球場
体育館 → アミノバリューホール
武道館 → ソイジョイ武道館
と呼ばれるようになった。野球場やサッカー場はともかくとして、武道館に対してもネーミングライツ契約を行うのはいかがなものか、と感じなくもない。
#9 鳴門・大塚スポーツパーク

#10 ソイジョイ武道館
■ 徳島ヴォルティスの歴史徳島ヴォルティスがJ2に参入したのは2004年のことである。イタリア語で「渦」を意味する「ヴォルティチェ(VORTICE)」に、T-土佐(高知県)、I-伊予(愛媛県)、S-讃岐(香川県)と四国各地の旧国名の頭文字を合わせた造語である。
この徳島ヴォルティスだが、初年度は12チーム中9位と健闘したものの、ここ3シーズンは連続してリーグ最下位と屈辱的な成績が残っている。
#11 ポカリスエットスタジアムの正面

#12 すだちくん

メインスタンド入り口付近にあるお賽銭箱。これに100円玉を投入する。集められたものは徳島ヴォルティスの強化費用に充てられるという。
#13 お賽銭箱
■ ロアッソ熊本この日の対戦相手は火の国・熊本のロアッソ熊本。ロアッソとは、イタリア語で赤を意味する「ロッソ」と、同じくイタリア語でエースを意味する「アッソ」を組み合わせた造語である。
熊本から鳴門までは何時間くらいかかるのだろうか?それでも、3連休の中日ということもあって、ロアッソ熊本の赤いサポーターも多くスタジアムに訪れていた。
#14 ようこそ徳島へ
■ ポカリスエットスタジアム陸上競技場と兼用するホームスタジアムの場合、老朽化したスタジアムが少なくないが、2003年の「ねんりんピック徳島2003」の総合開会式の会場にも使用されており、外観上も、非常にきれいなスタジアムである。
収容人数は20,441人であるが、バックスタンドは芝生席になっているが、J1昇格の場合、座席で15000人以上収容が必要となるため、改修が求められる。
#15 試合前のエキシビジョン

#16 キックオフは13:04
■ 徳島のスターティングメンバー開幕戦は東京ヴェルディとスコアレスドロー。悪くないスタートを切った徳島だが、2戦目で水戸ホーリーホックに0対1と敗れる。1分け1敗。まだ、今シーズン、ゴールが生まれていない。
システムは<4-4-2>。GK上野。DF麦田、ぺ・スンジン、三木、筑城。MF米田、倉貫、大島、徳重。FWファビオ、羽地。名古屋からレンタル中のMF青山隼は3試合の出場停止中。代役はMF大島。
DF三田がスタメンから外れて突破力のあるDF麦田が初スタメン。DF筑城が左サイドバックに回る。前線は新外国籍選手のFWファビオとFW羽地の大型2トップ。FW石田がベンチスタート。
#17 ヴォルティスの横断幕①

#18 ヴォルティスの横断幕②
■ 熊本のスターティングメンバー対するロアッソ熊本。開幕戦はザスパ草津に敗れたが、2戦目で横浜FCに逆転勝利。1勝1敗とまずまずのスタート。
システムは<4-3-3>。GK小林。DF市村、河端、矢野、チャ・ジホ。MF石井、山本、藤田。FW宇留野、小森田、木島。注目のMF藤田は3試合連続でトップ下。前線は3トップで中央に186cmのFW小森田が入る。
#19 ロアッソの横断幕
■ 麦田の先制ゴール試合はホームの徳島が開始4分にいきなり先制する。
ロングボールに対してFWファビオが落とし、そのボールをキープしたFW羽地からゴール前に入り込んだDF麦田にラストパス。DF麦田が落ち着いて決めて徳島が先制。2試合連続でスタメン落ちしたDF麦田が先発起用にこたえてチームの今シーズン初ゴールをマークした。
その後もホームのサポーターの後押しを受けて徳島が攻め込むが、MF徳重が決定機を逃すなど追加点を奪えない。
前半15分を過ぎると熊本がボールを支配し始めるが、左ウイングの位置に入るFW木島が不調で決定機は作れずに前半は1対0の徳島リードで折り返す。
#20 試合前①

#21 試合前②
■ 今シーズン初勝利!!!後半も立ち上がりから引き続いて熊本のペース。MF藤田、MF石井、MF山本の中盤が機能し始めて支配力を増す。後半開始から投入されたFW井畑のアグレッシブな動きも徳島のディフェンスを困らせる。
同点ゴールも時間の問題かと思われたが、後半25分に左サイドでボールを受けたFW羽地が相手DFを振り切ってゴール前にグラウンダーのパスを送ると、最後はFW石田のパスを受けたMF倉貫が決めて2点目を奪う。これが、徳島のホーム通算100ゴールのメモリアルゴールとなった。
これで完全に優位に立った徳島は、後半40分にもハーフカウンターからMF徳重がドリブルで運んで豪快に右足で決めて3対0。結局、そのまま徳島が勝利し、今シーズン初勝利を挙げた。
#22 試合終了後

#23 最終スコア
■ この勝利の意味するもの開幕前に、FW羽地、MF徳重、MF青山隼、DF三木、DFぺ・スンジン、GK高桑と各ポジションに即戦力級の選手を獲得し、チーム史上最高の戦力となった徳島ヴォルティスだったが、開幕から2試合ノーゴール。躍進への期待が高まっていただけにやや拍子抜けのスタートとなった。
したがって、ホーム2試合目で同格のロアッソ熊本に対してどういう試合が出来るのか、今シーズンのターニングポイントになりかねない重要な試合だっただけに、非常に大きな勝ち点「3」となった。
これで1勝1敗1分け。このゴールラッシュは新生ヴォルティスの変化を印象付けた。
■ 右サイドを疾走した麦田MOM級の活躍を見せたのは大阪体育大学出身で3年目となる右サイドバックのDF麦田。昨シーズン、右サイドバックにコンバートされてレギュラーポジションをつかんだが、今シーズンは開幕から名古屋からレンタル移籍してきたDF筑城にポジションを奪われていただけに、大アピールのゴールとなった。
熊本のストロングポイントは言うまでもなく左サイドに位置するFW木島であるが、DF麦田がスピード溢れる突破を見せて完全にこのサイドで主導権を握った。クロスの精度は課題と言えるが、今シーズンはFW羽地とFWファビオという185cmを超えるターゲットマンが加入し、DF麦田の存在はより大きくなるだろう。開幕2試合がスタメン落ちしたのが、不思議で仕方ない。
#24 麦田和志 (#17)
■ 最終ラインを支えるぺ・スンジンそのDF麦田の活躍に負けず劣らずだったのが、草津から加入したDFペ・スンジン。1987年生まれで2007年のFIFA U-20W杯に韓国代表として出場した期待の若手ディフェンダーだが、「高さ」と「強さ」と「しなやかさ」は群を抜いていた。熊本のキーマンであるFW小森田を完全に封じて全く仕事をさせず、奪ったボールを味方につなぐプレーも正確で安定感があった。
1987年生まれということで北京五輪世代となるが、同年代の日本人センターバックと比べても優れた部分は多く、今シーズン、怪我なく常時試合に出場すれば、J2でトップのディフェンダーの1人として認知されるのは確実だろう。
ガツガツプレーするタイプが多い韓国人センターバックでは異質であり、このクラスの若手選手が簡単に他国に流出してしまう韓国リーグの惨状を嘆かずにはいられない。
#25 ぺ・スンジン (#20)
■ 大型の2トップ注目を集めるFW羽地とFWファビオの2トップの威力は1点目のDF麦田のゴールに表れた。高さのある選手が二人並ぶことで与えるプレッシャーは相当のものであり、うまく二人が絡んでゴールまで結びついた。
甲府から帰って来たFW羽地がファイタータイプで90分間、相手ディフェンダーと格闘して味方のチャンスシーンを陰から支えるターゲットタイプであるのに対して、FWファビオは同じ長身であるが、もっと繊細で相手に囲まれたとしても慌てずにボールを持てるだけのキープ力がある。
この試合では2トップにシュートシーンがほとんどなかったのが不満材料であり改善点であるが、FWファビオとFW羽地の2トップのコンビネーションは水戸戦と比べると大きく向上しており、当面はこの2トップがベースになるだろう。
■ 不可欠な2列目の活躍ただ、この2トップはスピード感に欠ける部分があり、せっかく奪ったボールを素早い攻撃に結びつけることは出来なかった。この試合ではDF麦田が絡んだシーンではスピード感ある攻撃につながったが、それ以外ではスローな展開に持ち込まざるをえなかった。
この問題を改善できるとすれば2列目のアタッカー陣ということになるが、この試合ではMF徳重とMF大島の動きがイマひとつ。
右サイドに入ったMF大島は序盤はDF麦田とのコンビネーションの良さで攻撃の起点となったが、徐々にミスが多くなっていった。また、京都から獲得したMF徳重は3点目の見事なドリブルシュートを決めたがそれ以外ではブレーキになることが多く、スピード感あふれるドリブルを披露出来たのはそのゴールのシーンのみだった。
2トップのコンビネーションだけで得点が奪えるようなタイプではないので、MF倉貫を含めた中盤がどれだけ攻撃に関与してゴール前に厚みを加えられるかがポイントになる。
■ 遠かった同点ゴール一方の熊本は横浜FCにアウェーで逆転勝ちをした勢いを持続したかったが、前半の早い時間帯に先制ゴールを奪われたことが誤算だった。徳島の右サイドのDF麦田のスピードに手を焼き、FW木島とDFチャ・ジホが攻撃的な良さを発揮できなかった。
FW高橋がアビスパ福岡に移籍したことで絶対的なエースストライカーがいなくなって得点力という意味では大きなマイナスであり、先制ゴールを奪われると逆転まで持っていくのは現状ではかなり厳しい作業である。
■ トップ下の藤田俊哉注目のMF藤田はトップ下で先発出場。3トップ下という大役であるが、ボランチでの起用も多かった名古屋時代と比べると得意とする役割であり、高い技術とタイミングのいい飛び出しはチームの攻撃に厚みを加えるのに十分である。
まだ、MF藤田のパスに味方が付いていけないシーンも多いが、時間が経てばコンビネーションは良くなっていくだろう。J2昇格から2年目で、プロとしてのキャリアの乏しい選手の多いクラブが偉大なフットボーラーを加えてどのように進化していくのか、今シーズンのJ2の見どころといえる。
#26 藤田俊哉 (#28)
■ ラスト徳島ヴォルティスがJ2に昇格して5年目を迎えた。思うように成績は上がらず、表面上の観客動員も伸び悩んでいる。母体である大塚製薬サッカー部からのバックアップもあって、他の地方クラブと比べると財政的な面で余裕がないわけではないが、過去の4年間は、思い描いていたはずの道ではなかったはずである。
したがって、スタジアムに到着する前は、「地元の盛り上がりはイマひとつなのか?」という思いを抱いていたが、実際には考えていた以上にスタジアムは盛り上がっており、地元のサポーターの期待の大きさは十分に感じられた。
周りを見渡してみると、50歳以上のサポーターが多いことに気がつく。実際にJリーグの観戦者の調査記録を見て見ると、50歳以上のサポーターの割合が2008年は25.3%でJ2ではロアッソ熊本に次いで第2位。そのクラブが本当の意味で地元に根付いているかどうかは、50歳以上のサポーターの割合の高さが1つの指針となるが、そういう意味では十分である。
若者だけが集まるスタジアムは活気はあるが深みはないことがある。遠い四国のスタジアムにはその深みが感じられた。
#27 ラスト
