■ 開幕カード①J1の開幕戦の9カードの中では、味の素スタジアムでのFC東京とアルビレックス新潟の試合と並んで、もっとも早い時間のキックオフとなったこの試合。
2008年はJ1で9位。シーズン途中までは残留争いに巻き込まれるなど、不本意な成績に終わった横浜FMはホームでの開幕戦。オフに積極的な補強は行わずに、若手選手の可能性に賭けた。
システムは<3-4-3>。GK榎本。DF栗原、松田、中澤。MF長谷川、小椋、清水、田中祐。FW狩野、渡邉、兵藤。MF河合が怪我のため欠場。国見高校でも活躍した大物ルーキーのFW渡邉千真が開幕スタメンデビューとなった。
一方のサンフレッチェ広島は2008年のJ2を圧倒的な強さで制して、1年でJ1に復帰。システムは<3-6-1>。GK佐藤昭。DF森脇、ストヤノフ、槙野。MF森崎和、青山敏、ミキッチ、服部、高柳、柏木。FW佐藤寿。本来は2列目に入るはずのMF高萩とMF森崎浩が怪我で欠場。新外国人のMFミキッチがスタメン出場。
■ 佐藤寿人の逆転ゴール試合は前半から大きく動いた。
前半3分に横浜FMがいきなり先制。右サイドのMF清水の中央へのクロスからルーズボールをFW狩野が競ってうまく中に落とすと、ディフェンスラインの裏のスペースにこぼれたボールをFW渡邉が右足を振りぬくと、これがコース隅に決まって先制ゴール。大学生ルーキーの開幕戦ゴールは元名古屋の望月以来。
先制された広島だったが、ボールキープ力では相手を上回り、落ち着いたボール回しでチャンスを作っていく。すると、前半19分にセットプレーの流れから左サイドに流れたDFストヤノフのクロスをファーサイドに待っていたDF槙野がダイビングヘッドで決めて同点に追い付く。
さらに、前半24分にも、広島が横浜FMの守備陣を翻弄。左サイドからMF服部のグラウンダーのクロスを中にポジションを取ったFW佐藤寿が得意の左足でネットに突き刺して勝ち越しに成功する。
■ 柏木の追加点逆転でムードの上がる広島は、前半38分に追加点を挙げる。MFミキッチが裏のスペースに飛び出して相手GKのチェージも交わしてフリーでボールを持つ。シュートコースは消されてしまうが、中央のFW佐藤寿人にパスを送ると、FW佐藤寿が粘ってつないだボールを飛び込んできたMF柏木が左足でゲット。3対1とリードを広げる。
広島は前半15分までのの時間帯は1トップのFW佐藤寿人にボールを集めて攻撃をスタートさせようとするが、FW佐藤へのボールは横浜FMの最終ラインが封じて思うような形を作れなかった。すると、シフトチェンジし、開いてサイドで待つMFミキッチやMF服部、さらにはDF森脇やDF槙野らを効果的に使って攻め込んで、一気に逆転に成功した。
■ ストヤノフのフリーキック2点ビハインドの横浜FMは開始からMF山瀬功とFW坂田を投入。この交代で、全く前半はダブルボランチでボールを持つことができなかった横浜FMの攻撃は少し落ち着きを取り戻したが、しかしながら、後半7分に広島のDFストヤノフがゴール正面でのフリーキックから鮮やかなゴールを決めて4対1とする。
このシーンはゴール正面の絶好の位置からのフリーキックであり、どちらかというと左足の方が蹴りやすい位置であったが、壁の作り方もゴールキーパーの位置取りも中途半端で、キックの精度も高かったが、いとも簡単にゴールを許した。
横浜FMは後半24分にセットプレーからDF栗原のゴールで1点を返すが、反撃はそれまで。4対2で広島が勝利し、開幕戦を勝利で飾った。
■ 効果的なカウンター広島は昨シーズンのJ2で見せていたような「ボールも人も動く流れるようなサッカー」が完璧に出来たわけではなかったが、素早い攻守の切り替えから効果的なカウンターを繰り出し大量ゴールに結びつけた。
J2では「広島相手に前からプレッシャーをかけても無駄。」という意識が対戦チームにあったので、前からプレッシャーをかけてくるチームとの対戦は久しぶりで立ち上がりは戸惑った面もあったが、次第に対応していった。
後半は横浜FMの圧力に負けて落ち着いてつなげなくなる時間帯が増えて、前線のFW佐藤寿へのロングパス1本という単調な攻撃が多くなったが、開幕戦で4ゴール。申し分ないJ1復帰戦となった。
■ 新外国人のMFミキッチ広島は右のウイングバックのMFミキッチが活躍。リーグ戦のデビューゲームとなったが、前評判通りの実力を発揮し、右サイドのタッチライン際で見せたドリブルが効果的で、攻撃の起点となった。
前評判では爆発的なスピードが売りということであったが、スピードだけでなく技術もある。運動量もあって、欧州的なサイドアタッカーで、今のJリーグにはなかなかいないタイプの選手である。昨シーズン、右サイドでプレーしていたMF李漢宰のプレーも良かったが、MFミキッチのポテンシャルはそれ以上である。
一方で、GKは不安定だった。もともと攻撃的なチームであり、3バックに入る3人も攻撃が好きな選手であり、ある程度の失点数は覚悟しているチームだが、ゴールキーパーのGK佐藤昭の不安定なプレーは不安材料である。J1でも実績十分のGK下田はおらず、高さと連携面で安定性を欠いた。
■ 柏木陽介の活躍昨シーズン14ゴールを挙げたMF高萩とMF森崎浩が怪我ということで、1トップ下のレギュラー二人を欠き不安視されたが、MF柏木が大活躍。もともと日本代表候補にも召集されるなどポテンシャルは抜群であるが、昨シーズンは怪我もあって精彩を欠きチーム内での立場も危うくなっていた。この日はうんぷんを晴らす広範囲な活躍だった。
J2では相手に引かれることが多いので、柏木が活動するスペースが狭く、スピードに乗ったドリブルを披露することが少なかったが、J1では相手も攻めてくるので裏へのスペースができやすい。この日の後半はその典型であり、横浜FMが攻め込んできたので裏に十分なスペースがあって、MF柏木が個人技を発揮できる環境が整っていた。
日本代表クラスが揃う横浜FMのディフェンダーを相手に、全く臆することなく仕掛けて、効果的なプレーを90分に渡って続けることができた。
■ ショッキングな敗戦一方の横浜FMはショッキングな敗戦となった。J1経験の豊富な広島相手であり、単なる昇格クラブという位置付けではなく、しっかりと分析も行ってきただろうが、完全に力負けだった。
前半は、MF長谷川とMF小椋のダブルボランチがほとんどボールを持てず、攻撃らしい攻撃は先制のシーンと前半のラスト5分くらいであり、後半はメンバーを変えて修正してきたが、DFストヤノフのフリーキックで勝負ありだった。
守備の中心となるMF河合を欠いたのは痛く、両ウイングバックも機能せず、マッチアップしたMFミキッチとMF服部を相手に後手に回った。昨シーズンの後半は、「このメンバー」と「このスタイル」で勝利を重ねていて、かつ内容のあるサッカーを見せていたので、「昨シーズンのサッカーができれば大型補強をしなくても上位に食い込める。」という手ごたえもあったはずなので、そう考えると、開幕早々に、見直しが必要となるかもしれない。
■ 開幕ゴールの渡邉千真唯一の明るい話題は、FW渡邉のゴール。開始3分という早い時間でのゴールでチームも本人も乗っていけるかと思わせた。ゴール自体はポジショニングで奪ったものであり、きっちりとサイドを狙ったシュートもみごとであった。
ただ、それ以外のシーンでは、なかなか思うような仕事はできなかった。万能型ということでポストプレーでの期待がかかるが、前半から攻撃の起点として活躍することはできず、やや不完全燃焼だった。
新外国人フォワードを取ることなく、FW渡邉に賭けた部分はあるので、横浜FMの躍進には不可欠なプレーヤーであり、悪くないデビューであったが、ポテンシャルを考えると、もっと出来ても良かった。
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